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2024.10.11

[イベントレポート_カリキュラム編] CS夏合宿2024「CS寺子屋 @OKUTAMA+」

本記事は、2024年8月31日(土)・9月1日(日)の1泊2日で奥多摩にある泊まれる学校「OKUTAMA+」にて開催したCS夏合宿の、授業コンテンツの詳細をまとめたイベントレポートです。

筆者は本合宿の参加者で、株式会社CareMakerのCS責任者の尾田(@knsn_07)です。
参加者目線での感想も交えながら、授業の内容を振り返っていきたいと思います。

当日は、著名なSaaS企業でマネジメントを経験してきたメンバーで構成されるKPP(KOMMONS Premium Partners)の方々が講師を担当されました。
内容としては、カスタマーサクセス部門の戦略策定や組織マネジメントについて、合計3つの授業を通して共に学び合い、参加者同士でディスカッションしました。

本記事では合宿での授業内容を、合宿に参加できなかった方にもシェアさせていただきます。
是非自社のCS活動にお役立て下さい。

なお、そもそものCS夏合宿全体の概要については、以下をご覧ください。

授業全体の目的と構成


まず初めに、今回の夏合宿における授業全体の目的(=目指す状態)と授業の構成についての説明がありました。

主な目的は、「各自が自社のCSチームの活動方針を、上司に提案できるぐらいまで明確にプランニングできている状態になる」こと。

そのために、以下3つの授業がそれぞれ60分ずつで行われました。

  • 授業1. 自社にとっての”理想のCS”を言語化しよう
  • 授業2. 理想のCSを実現するために、実施すべきことの優先順位を立てよう
  • 授業3. よくあるケーススタディで、CSチームのマネジメントを体験する

また、授業内での思考や議論をスムーズにするため、参加者には事前ワークも課されました。

事前ワークの内容も含む、授業の全体構成は以下の通りです。

なお、事前ワークの一例としては以下のCSキャンバスを整理するなどを行いました。

事前ワーク自体も棚卸しして考えるのに時間はかかりましたが、事前に整理しておいたことで合宿当日は限られた時間でもアウトプットがスムーズに出来ました。

また、合宿前に「もくもく会」という事前ワークを作業する場がオンラインで2回開催されたこともあり、合宿前から学び合いの意識が醸成されていました。

授業1. 自社にとっての”理想のCS”を言語化しよう

授業の1つ目は、自社にとっての理想のCSを言語化するワークでした。

講師はSuccess Goal lab.株式会社(現 株式会社ATOMica Platform開発本部/KOMMONSカンパニー)の大竹 健斗さん、株式会社マネーフォワードの今井 裕美さん、株式会社ラクスの小岡 崇さんの3名。

授業1の全体構成は以下の通りです。

  • 授業1-1. バリューカードを使った価値観ワーク
    • 「バリューカード」を使って自社CSにとって大事な要素を抽出する
  • 授業1-2. 3年後のCSキャンバス作成ワーク
    • 3年後の自社のCSキャンバスを作成を通して、理想の姿を言語化する
  • 授業1-3. 表彰状作成ワーク
    • 3年後の姿を表彰状という形で作成することで、理想の解像度を高める

授業1-1. バリューカードを使った価値観ワーク

このワークでは、自社のCSチームを主語に、現在と未来で大事にしたい価値観を3つずつピックアップし、グループ内でシェアしました。

ピックアップのやり方としては、「バリューカード」という価値観を表す単語が多数記載されたシートの中から選ぶ手法です。

授業1-2. 3年後のCSキャンバス作成ワーク

このワークでは、事前課題で整理した現状のCSキャンバスの3年後版を定義しました。

その際に、1-1で言語化した自社CSチームの未来の価値観にも都度立ち返ることで、考える上での指針となりました。

授業1-3. 表彰状作成ワーク

このワークでは、1-2までに言語化した内容を踏まえて、3年後の未来のCSチームの活動を表彰状という形式でアウトプットしました。

学校になぞらえて表彰状というフォーマットを用いられている点がユニークですが、未来の理想が実現された状態をイメージして表彰することによって、理想がより現実味をおびて解像度高く認識できる体験になりました。

実際に使用した表彰状のフォーマット(1枚目)、記載例(2枚目)は以下の通りです。

以上の通り、授業1では3つのワークを通して自社CSチームの3年後の未来の理想状態を言語化することを行いました。

参加者はスタートアップ企業に在籍している方も多いため、日々変化し続けている中で3年後の姿を想像するのは中々難しい部分も少なからずありました。

それでもあえて言語化して参加者同士でシェアしてディスカッションすることで、普段は中々考える時間が割けない長期視点で、自社CSのあるべき姿を考える非常に重要な機会となりました。

授業2. 理想のCSを実現するために、実施すべきことの優先順位を立てよう

授業の2つ目は、授業1で言語化した理想を実現するために、具体的に実施する施策を考えるワークでした。

講師は弁護士ドットコム株式会社の中嶋 太志さん、株式会社リーナーテクノロージーズの織茂 尚之さん、コミューン株式会社の城田 貢己さんの3名。

授業2の全体構成は以下の通りです。

  • 授業2-1. 業績面の優先課題の明確化
    • 全社的なトップイシューと、それを踏まえたCSチームのトップイシューを定義する
  • 授業2-2. マイルストーン設定・実行計画策定
    • 3年後の理想状態から逆算した1年後・3ヶ月後の状態と実施する施策を考える
  • 授業2-3. 上司への提案スライド・To Do-List作成
    • 上司である事業責任者に対して、上記プランを提案するためのアウトプットを作る

授業2-1. 業績面の優先課題の明確化

このワークでは、CSの理想の姿を実現する上で課題の優先度を定義し、グループ内でディスカッションしました。

優先課題を考える部分は事前ワークの1つでしたが、順序としてはまずCSの枠を超えた全社的な課題を特定し、それを踏まえてCSが解決すべき課題を特定するというものでした。

以下のロジックツリーで整理されたフォーマットが、非常に考えやすかったです。

また、グループワークでは自身が考えた課題が「なぜ1位か」という背景にこだわりを持つべく、その背景を含めてシェアしました。

CSは特に多方面での成果創出が求められるため、その中で特に注力すべき課題を胸を張って示すことできる状態にまで言語化しておくことが重要であることを学びました。

授業2-2. マイルストーン設定・実行計画策定

このワークでは、ここまでで固めた方針を、以下のようなワークシートを使って具体的な計画に落としていく作業を行いました。

具体的にはマイルストーンと実行計画の2つを定義しました。

1つ目のマイルストーンでは、3年後の理想状態から逆算して、1年後・3ヶ月後にどこまで到達している必要があるかを考えました。

2つ目の実行計画では、理想状態と現状との差分(ギャップ)を埋めるために実施すべき施策を考えました。

なお、後者の施策を考える上では、KOMMONSが独自に提供している以下のような一般的なCS施策リスト(※画像は一部のみ)を参考にして考えることでアイデアを網羅的に検討することができました。

授業2-3. 上司への提案スライド・To Do-List作成

このワークでは、ここまでで考えたプランを上司である事業責任者に提案するためのアウトプットと、上司への提案アクションなどを含めた今後のTo Doリストを作成しました。

講義でインプットだけして具体的なアクションには繋がらないことはあるあるですが、今回は「上司に提案する」という具体的な次のステップに繋がっており、各自がアクションしやすい設計になっている点がとても工夫されていました。

以上の通り、授業2では3つのワークを通して自社CSチームの3年後の未来の理想状態を実現するために具体的なプランとネクストステップについて言語化しました。

ちなみに、私自身は既存の解約率やクロスセルを上位課題と据え置き、そのために現状はハイタッチでオンボーディング成功の再現性は上げられてきたところを、ロータッチ化した上で同じクオリティを担保できるようにするような方針を策定しました。

それにより、生産性高く低解約率を実現し、浮いたリソースでクロスセルの新しい提案にハイタッチのリソースを充てることを考え上司にも当てた結果、無事に合意ができました。

授業3. よくあるケーススタディで、CSチームのマネジメントを体験する

授業の3つ目は、授業1,2とは独立した形で、架空のCS組織を元にしたケーススタディによりCS組織のマネージャとしての意思決定をグループで議論するワークでした。

講師はSyinc株式会社の内川 智子さん、株式会社CAMPFIREの大河内 唱平さん、サイボウズ株式会社の大脇 一起さんの3名。

授業3のケーススタディは以下のような内容でした。

  • 前提状況:
    • 想定企業:リリースから4年・導入社数は500社のSaaSを展開している架空の会社
    • CS課題:既存売上の向上(経営からのオーダー)、現リーダーの離職に伴う新体制の構築
    • 自分の役割:CS部門のマネージャ(リーダー&メンバーの更に上の階層)
  • ワーク1:新体制におけるリーダー、アップセル担当をそれぞれ誰にするか?
  • ワーク2:更にメンバー5から、「頑張っているのに認められない/給与が上がらない」と不満の声が上がってきた場合、マネージャとしてどのように対応するか?

ワーク1:新体制におけるリーダー、アップセル担当をそれぞれ誰にするか?

ワーク1では、現リーダーの退職に伴い後任として5名のメンバーのうち誰をリーダーにするか、また経営オーダーである既存売上向上のためにアップセルの選任担当を誰に任命するかを議論しました。

グループごとに議論して答えを出し、最終的には他グループの答えも含めてクラス全体でシェアしましたが、グループによって答えが分かれていました。

ちなみに自分のグループでは、後任のリーダーはメンバー4、アップセル担当はメンバー3という結論になりました。

理由として、まずメンバー4は戦略性がありロジカルで頭が切れる優秀な若手だと想定されるので、抜擢の意味でリーダーに選定しました。「正論かざしがち」とあるのでパーソナリティに伸び代はあるものの、リーダーを経験する中で課題も克服できるだろうという会話になりました。

また、メンバー3は前職も営業に強い会社で経験を積んでおり、勢いはあるようなので提案のアクション数を最大化させるために最も力を発揮してくれるだろうと考えて、アップセル担当に選定しました。

ワーク2:更にメンバー5から、「頑張っているのに認められない/給与が上がらない」と不満の声が上がってきた場合、マネージャとしてどのように対応するか?

ワーク2では、メンバー5から以下のような相談を受けた際、マネージャとしてどのように応えるべきかを議論しました。

このワークもグループにより回答は様々でしたが、自分のグループではまずはメンバーの意見を傾聴することに専念した上で、問題点として本人の強みを活かせるポジションを提供しきれていないのではないか?より強みを活かせるポジション(具体的には、カスタマーサクセスよりもカスタマーサポート向きなのではないかという仮説)を本人と相談するのはどうか?という結論に至りました。

以上の通り、授業3ではマネジメント上でよくあるシチュエーションを題材に、マネージャとしてどういった意思決定・振る舞いをするかを考えました。

グループによって異なる多様な答えが見られましたが、グループ内でも最初にシェアした際は、各々考えが異なる部分も多かったです。

この点、本授業のメッセージとしても「マネジメントには正解がない」という結論でした。

まとめ・感想

以上のように、CS夏合宿では3つの授業を通して、自社のCS組織の未来の理想定義とそこに向けた計画の策定方法、そして組織面でのマネージャとしてのマインドを学びました。

参加した感想としては非常に濃く学びのある時間であった上、普段意識しないとどうしても短期的な思考になりがちなので、ふと立ち止まって中長期的な思考で考える時間を取ることが非常に大事だと気づかされた機会でもありました。

合宿で考えたことをしっかりと自社に持ち帰り、着実にアクションに移して成果に繋げていきたいと思います。

さいごに

CS夏合宿2024でも講師を務めてもらったKPPによる事例登壇や、ワークショップ、コミュニティメンバーのLTステージなど多数のコンテンツを用意している、大型オフラインイベント「SUCCESS CAMP 2025 -挑もう。-」は、2025年1月25日(土)に開催予定です。

このイベントでは、業界をリードするCSのプロフェッショナルたち(KOMMONS Premium Partners)が、解約防止、新規顧客獲得、プロダクト開発などの成功事例や、データ活用の具体的な手法についてもお話いただきます。

また、ワークショップやデネットワーキングを通じて、実践的なスキルを磨き、同じ課題に挑む仲間たちと出会うこともできます。

SUCCESS CAMP 2025 -挑もう。- 概要

  • 日時: 2025年1月25日(土) 14:30 ~ 21:30(受付開始: 14:00)
  • 会場: 株式会社ヤプリ 住友不動産六本木グランドタワー41階
  • このような方におすすめです:
    • CS業界の事例登壇を通じて知識を身につけたい方
    • CSの役割や可能性をさらに広げたい方
    • プロダクトや事業フェーズが共通する仲間とのネットワークを築きたい方

皆さまのご参加をお待ちしております!