2024.09.30
【イベントレポート】#CS寺子屋Vol.17「カスタマーサクセスの組織開発と評価制度」
- CS
- カスタマーサクセス
- 組織開発
- 評価制度
カスタマーサクセス組織は同じチーム内でも業務範囲が多岐にわたり、その中でも直接売上を生み出す業務とそうでない業務が含まれているのが特徴です。
そのため、業務内容に合わせて、数値目標だけでなく状態目標も設定しながら、目標達成に向けたメンバーとのコミュニケーションや評価を行っていく必要があります。
一方で、CS組織の運営についてはまだノウハウも少なく、以下のような課題をよくお伺いします。
・目標に対し、メンバーに期待したアクションを取ってもらえていない
・メンバーによって対応業務が異なる中で納得感のある目標設定・評価をどの様にしたら良いかわからない
そこで今回は、組織開発支援をされているSyinc株式会社の内川さんに目標設定・評価・フィードバックなどの基本的な組織運営の進め方のおさらいと、CSならではの難しさやポイントについてお話いただき、後半では、株式会社オープンエイトでCS組織の統括をされている佐伯さんに同社の具体的な評価制度設計の事例をお話いただきます。
スピーカー紹介
Syinc株式会社
代表取締役 内川 智子
人材業界で13年ほど営業、CA、事業開発を経験した後、カスタマーサクセスのマネージャー、人事を経て2024年4月に創業。東京のスタートアップから地方中小企業まで、「やりたいことはあるけれど、チームをどう率いていいかわからない」方に向けたソリューションを提供している。
「サステナブルな経営・組織」を目指して、仕組みや体制の構築支援と、コミュニケーション設計に尽力。KOMMONSでは「傍楽を働く」の事業開発を支援。
株式会社オープンエイト
カスタマーサクセス本部 本部長
佐伯 和彦
2019年3月にオープンエイトへJOIN。FSとしてVideo Brainの立ち上げ期〜成長期を中心メンバーとしてリードし、現在はカスタマーサクセス組織全体の管掌及び新規セールスチャネル開拓リードに従事。
登壇事例1 Syinc株式会社 内川 智子さん
組織課題の解消にもつながる”うまくいく評価制度のポイント”をお伝えします。
評価制度、こんな使い方になっていませんか?
「上司が全然評価してくれないんだよね。」「営業は数字で結果が出るから評価しやすいよね。」「まだ給料に見合った仕事してないから…」社内でこのような声を耳にしたことはありませんか。
こうした声の背景には、評価制度がこんな使い方になってるケースがあります。
・TO DOリスト
・目標数字を達成するための評価
・行動ベースでの評価(※コンピテンシー評価が正しく運用されているか?)
評価制度の目的は、「人を(管理するのではなく)会社が理想とする人材像にむけて育成する」というものです。評価制度=人を育成するツールなのです。意外とこの目的を認識できていない中小企業の社長さんも実は多くいらっしゃいます。
そして、評価制度は「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つから成り立っています。今回お話する中で取り扱うのは、「等級制度」と「評価制度」です。
また、評価制度の中には「目標設定」という言葉も出てきますが、これは”次のグレードに求められるスキルを獲得するための現状把握と振り返り”という位置づけです。そして、人材にどのようなスキルを求めるのかを明確に記載しているものが等級制度です。
等級制度の縦軸である「レベル分け」は多くの企業でなされているものの、横軸の項目である「会社が従業員に求めるもの」の明示度合いは企業によって様々です。
そのため、実際には職種ごとに詳細まで明示している企業はそこまで多くなく、詳細については管理職に委ねられているケースも多いことから注意も必要です。等級制度において職種ごとの詳細な明示がない場合は、各部門の管理職の解釈が必要となり、特に部門間の異動などがある場合はその解釈の整合性も重要になってきます。
等級(グレード)の入学要件はスキルで定義されることが多いため、卒業要件については企業のミッション・バリューが反映されることが望ましいと思います。私がご支援している企業様では、スキルがどんなに高くても「その会社らしい行動ができていなければ次のグレードには上がれない」という制度にしていることが多いです。
こうした等級制度の設計をしながら、「現在の等級」と「次の等級」のギャップをどのように埋めるか?という観点で目標設定を行なっていくと、現状把握と振り返りをしながら会社が理想とする人材像にむけて育成ができるのです。
CS評価の難しいところ
一般的な評価制度についてお話してきましたが、一方でCSだからこその評価の難しさというのもあります。それは、以下の3つの観点です。
1つ目は、「成果のタイムラグ」です。CSの取り組みは成果が出るまでに時間がかかるため、今一生懸命頑張っていることが必ずしもその時の評価と一致しないということがあります。
2つ目は、「プロダクトの成果か?CSの成果か?」という観点です。CSとしての努力なのか、プロダクトの成果なのかというのは、取り扱うプロダクトによってその判別が難しいケースもあるためです。
最後に3つ目は、CSの場合スキル要件が画一的ではないことが多くなるため、「業務範囲の広さと相対評価」についても難しいポイントです。
こうした観点があることから、しっかりと社内でコミュニケーションを取り、期待・役割設定が適切にできていることが大切です。実際に私がCS組織の評価制度設計をお手伝いする際は、等級制度については横軸(=会社が従業員に求めるもの)の詳細項目が多くなり、andではなくorで示すなど柔軟性を持ったかたちで評価できるように設計しています。
CSの場合、成果がダイレクトに数値で見えにくいケースが多いため、数字だけではなく”状態目標”も設定し、上司・部下間で「どのような状態になればGoodなのか」という認識の齟齬がないようすり合わせることが重要です。
上手くいく評価制度のポイント
上手くいく評価制度としては、次の3つのポイントをおさえることが大切です。
1.求められるスキルと結果が分けられている(抽象と具体のバランス)
2.部下が「どうすれば上がるか」わかっている
3.人材に求める要件、期待が明確
上記ポイントをおさえた評価制度に加え、目標設定をする際は”SMART”の観点を踏まえることで、よりうまくいくでしょう。
また、評価制度に合わせて、企業のミッション・バリューで評価を行なう際には、解釈にばらつきが出やすいため、「具体的な状態」を言語化する(対話する)ことが重要だと感じています。
評価をするのはあくまでもスキルなので、抽象度をコントロールしながら状態目標を置くことで、どのような職種・役割の人であっても会社が理想とする人材像にむけて育成する評価制度を実現することができると思います。
登壇事例2 株式会社オープンエイト 佐伯 和彦さん
続いて、実際のCS組織内での評価制度と運用の事例をお伝えします。
オープンエイトの歩み
弊社オープンエイトは、誰でも簡単にビジネス動画を編集できる”Video BRAIN”というサービスを展開しています。私はカスタマーサクセス部門を管掌するポジションと同時に、評価に関しては1人のマネージャーとして評価を受ける側も評価する側もどちらも経験しています。
評価制度は各社多様かと思いますので、組織の大きな変遷とその過程でどのようにブラッシュアップしてきたかについて、今回は事例としてお伝えできればと思っております。
まずはじめに弊社のCS組織の変遷をご紹介します。大きく「立ち上げ期」「拡大期」、そして現在の「サクセス期」という3つに分類ができると思っています。今回は、過去に「立ち上げ期」「拡大期」でそれぞれどのように評価の取り組みを行なっていたかをご紹介いたします。
オープンエイトの評価制度
CS組織の評価に入る前に、まずは会社としての評価についてもご紹介いたします。
弊社の評価制度は「定量」と「定性」の2軸で評価を行なっています。
定量についてはみなさんイメージがつくかと思いますが、事業目標から組織目標に落ちてきて、そこからグループや個人の目標に落とし込まれるという設計をしています。
定性については、”ステージ”と呼ばれる等級のような概念が使われています。
このステージに対してそれぞれ「バリュー」と「コンピテンシー」という2つの構成から定性の評価を行なっています。
「バリュー」と「コンピテンシー」はステージごとに一定の言語化はされているものの、全社的な指標であることから概念的であるため人によって解釈は様々です。
そんな中でカスタマーサクセス組織として、メンバー各自の目標にどのように落とし込むか?については非常に重要と捉えています。
各フェーズにおける対応
1.立ち上げ期
立ち上げ期の組織状態としては、組織運営に必要な諸々を0→1で作り上げていくフェーズです。そのため、評価という観点においても「数字をつくること」が何よりも最優先です。
弊社のCSも業務範囲がオンボーディングからアダプション、エクスパンションと広範囲でありながらも、定量の考え方においては「リニューアル」に重きを置いて目標を設定していました。
定量の達成度合いが重要なため、評価は定量目標のウェイトによるところが大きいですが、一方で定量目標の達成率以外でどのように評価するか?については定性面での判断が重要になってくると考えています。
例えば、ともにチャーン目標が未達成だったAさんとBさんでも、マネージャーよっては「AさんはMRRの合計が他メンバーの1.5倍あり、一定の貢献度を評価したい」と評価をしたりすると、同じ定量目標の達成率であったとしても、どの上司の下につくかによって評価結果が変わってしまい、メンバーの不満につながる可能性があると考えています。
そこで、弊社はこの課題に対し以下を実施しました。
・マネージャー以上の評価に対する認識を合わせる(ステージごとの求める状態の言語化)
・そこに紐づくワークフローの整備、マテリアルや標準セットなど
この過程で評価の状態目標や求めるスキルの要件も言語化することで、評価する側のばらつきを抑えていきました。
2.拡大期
立ち上げ期の課題を乗り越え、組織が順調に回っていくと拡大期に入っていきます。拡大期は、オペレーションの強化をしていくフェーズです。
弊社の場合は、拡大期になるとこれまでのCSの業務範囲に新たに1対Nのコミュニティ領域を担当するユニットやOpsユニットができたタイミングでした。
組織が大きくなる過程で、「組織のケイパビリティを高める」という観点や「提供価値を最大化する」という部分を組織目標にセットし、各メンバーの目標に落とし込んでいくことを考えるように変化していきました。
組織課題とメンバーの目標を上手くリンクさせつつ組織全体として、どのように動いていくのかは意識しているポイントです。
具体的には、顧客対応以外に組織の課題と紐づいた目標設定を行うことで、組織の課題として顕在化してくる「ナレッジの体系化」や「業務平準化」を進めるプロジェクトを行なってきました。実際にプロジェクトを任せる際にはステージごとのスキルセットと照らし合わせながら目標設定を行なっています。
個人的には、社内でプロジェクトをリードさせることが各メンバーの能力開発にもつながっていると感じており、その点もポジティブだととらえています。
また、最近運用を始めたばかりなのですが、各ステージごとにスキル/コンピテンシーを一覧化し、アセスメントの項目まで洗い出したスキルシートを作成することで「この状態ができているとは、具体的にどういうことなのか?」を共通認識化しています。
その結果、評価が似通った際には、スキルシートを用いながらスキル要件からもステージ級を評価に反映することで、評価の透明性やフィードバックに対する納得感にもつながると考えています。
現場では自己評価の際に自分のできているところ・できていないところを振り返るために使ったり、マネージャー・部長・第三者の目を入れるための、アセスメントにも利用し、本人の自己評価と実態のギャップを埋めることにも活用しています。
その他、月に1回開催しているマネージャー以上が参加する”育成会議”では、評価期間である半期ごとに各メンバーの伸ばしたい能力に合わせてタスクの割り振りやプロジェクトのアサイン、1on1でのフィードバックなどのコミュニケーションにもスキルシートを活用して落とし込んでいます。
これまでの取り組みによる変化
最後に、これまでお伝えした取り組みにより大きく変化があった2点をご紹介して終わります。
1.共通言語で語れることでコミュニケーションコストが改善
ふわっとした状態で目標設定をしてしまうことで、メンバーが「こんなに頑張っているのに…」というような不満を抱いてしまうことはよくあります。
しかし、スキルシートの取り組みなど、明確なスキル要件が共通言語化されたことで、共通のメジャーメントの中でコミュニケーションを取ることができるようになりますので、コミュニケーションコストを改善できる点は大きなポイントだと感じています。
2.各メンバーの目標設定が組織全体の戦略と適切にマージできている
個人の目標設定の作り方により、その後の組織成果が変わると考えてます。大きく動けるか、ベクトルが合わずに小さな前進で留まってしまうか、それほど個人の目標設定の言語化は重要だと考えます。
その点に置いては、個人の目標設定と組織戦略がうまくアラインできるようになったのは良い変化だと感じています。
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