2023.02.06
カスタマーサクセスマネージャーが社内で育つ、カスタマーサクセスイネーブルメントの始め方 Vol.3 パネルディスカッション
カスタマーサクセスの現場では、顧客の業務や導入目的に合わせたさまざまな顧客対応のスキルが求められます。対応する人によって、提案や回答の魅力度や品質に差が出てしまい、顧客の不満が発生することもよく耳にする話です。また、新しくカスタマーサクセスを始める人にとっては「求められるスキルが多く、何から始めれば良いのかわからない」「自身のレベルがどの程度なのか把握できない」というお悩みもよくお聞きします。
この様な課題への対応策として注目を集めているのが「カスタマーサクセスイネーブルメント」です。
※イネーブルメントとは、ビジネスで成果を出す社員を輩出する人材育成の仕組みです。
そこで今回は、株式会社ベーシック ferret One事業部 カスタマーサクセス部 アカウントサクセスグループ マネージャーの内野さんと、サイボウズ株式会社 カスタマーサクセス部 kintoneカスタマーサクセスチームリーダー 大脇さんをお招きして、先述した各々のカスタマーサクセス組織の取り組みをパネルディスカッション形式で、より深くヒアリングいたしました。このページは、パネルディスカッションの様子をまとめた記事となっています。
※株式会社ベーシック様、サイボウズ株式会社様それぞれのカスタマーサクセスイネーブルメントの取り組みについては別記事にて詳しく掲載しておりますので併せてご覧ください。
Vol1. 「ferret One」のカスタマーサクセスイネーブルメント
Vol2. 「kintone」のカスタマーサクセスイネーブルメント
パネリスト紹介
株式会社ベーシック ferret One事業部 カスタマーサクセス部
アカウントサクセスグループ マネージャー
内野寛太
人材系企業で営業職・企画職を経験したのち、 2020年12月に株式会社ベーシック入社。 入社以降、一貫してハイタッチ組織であるアカウントサクセスを務める。 2021年11月から同グループのマネージャーを担当。
サイボウズ株式会社 カスタマーサクセス部 副部長 兼 事業戦略室
大脇 一起
2014年に新卒で電力会社に入社し、2018年5月にサイボウズへ転職。ダイレクトマーケティング部に配属され、ファンづくり施策や導入支援などを担当。
2020年1月からは新設されたカスタマーサクセス部の立ち上げメンバーとなり、「kintone」「Garoon」のカスタマーサクセスチームでリーダーを担当。2023年1月からは副部長として4プロダクトチーム全体のマネジメントや、コミュニティ/サポートなども含めたカスタマー向け施策全体の戦略検討などを担当。
なぜ、イネーブルメントを始めたんですか?
内野:「製品の改善に時間を要する中で、お客様の満足度やサクセスに導けるかどうかは私たちアカウントサクセスグループの支援にかかっていた」ためです。
当時は、プロダクト側で大きなリファクタリングをしており、顧客の声をスピーディーに機能改善に反映できなかった時期でした。そうなると「今ある機能を使って、どうやって活用をしていただけるか」「カスタマーサクセスマネージャーのハイタッチ支援の中で、サクセスに導くノウハウをどれだけ提供できるか」といった活動に比重が置かれます。
そこに注力しようとすると、一定のレベルまでメンバーのスキルを底上げしないとアウトプットすることが難しい。そのため、イネーブルメントに注力することにしました。
大脇:私の場合、「先人が培ってきた顧客体験と関係性を超えていかなければいけない責任感」と「どういうカスタマーサクセス組織にしたいのか」という思いがかけ合わさって、イネーブルメントという行動につながったと考えています。
私が所属するカスタマーサクセス部は、サイボウズ株式会社の長い歴史の中で、社内ベンチャーのように立ちあがった部署でした。これまでビジネスを作っていただいた先輩方や既存のお客様が数多くいる。その中で、新しい組織として価値を生み出していく必要がありました。
「提供している顧客体験の品質に向き合う文化が築かれてきている」ことや「既存顧客を非常に大事に思っている営業や技術職の方々がいる」中で、中途半端なことをしてはカスタマーサクセスと言えない。カスタマーサクセス組織として存在価値を高めていくために、顧客と社内どちらにも喜んでもらえる体験を作っていかなければならないと考え、イネーブルメントに取り組んでいきました。
カスタマーサクセスイネーブルメントの取り組みは、いつから開始すべきか?
内野:粗くても良いので、できる限り早く取り組みを開始することをオススメします。カスタマーサクセスでは、組織の成熟度や目標・戦略とともに求められるスキルに変化がある。そのため、時間をかけて設計して取り組んだとしても常に改善が必要になります。
私たちはオンボーディングプログラムを作成しましたが、これは最初の型にしか過ぎません。作成から時間も経っており、多くの改善点が見えています。そのため、これからもメンバーと一緒に繰り返し改善を行っていきます。
大脇:「どのような組織を作りたいのか?」というコアな部分が定義できてないと難しいと感じている一方で、できる限り早いほうが良いとも思います。目に見えるものを作ることで得られる気づきは多いです。そして、そこから議論が生まれて継続的な改善の流れが生まれてきます。
ただし、イネーブルメントは会社で後回しにされがちです。結果に結びつくまでの時間が2〜3年必要になってくることもあります。日々の顧客対応のほうが、短期間で成果や行動評価に結びつきやすいことから「イネーブルメントは後回しにして、今は顧客対応に時間を使おう」という流れになりやすい。
でも、そのリソースの1割でも良いので、イネーブルメントに投資しておくと、1~2年後に組織の状態が大きく変わります。私たちの組織では、思った以上に効果が出ていることから、実践してみて本当に良かったと感じています。
課題設定力などのソフトスキルの研修の際は、社外の研修や講座を利用されましたでしょうか?
内野:私たちの組織では、このようなテーマの勉強会に参加希望する場合には、社内で得意なメンバーに教えを乞うという文化があります。”Give”の精神が強いメンバーが多いので、積極的に勉強会を開いてくれます。社内メンバーから発信するため、実践的で、より実務に近い形で勉強ができる。
ただし、本来であれば社外の研修や講座も活用しながら、「社内のレベルを超えていくための育成」が必要ではありますが、そちらは十分にできていないため課題に感じています。
大脇:課題設定力に関しては、まだチームとして高めていくような仕組みは整備されていません。なので、現在は比較的OJT(On-the-Job Training ※)形式で、課題設定をするメンバーと一緒に現場に入ってもらっています。
※OJT(On-the-Job Training):企業内教育手法の一つで、先輩が後輩に対して、業務実施に必要な知識やスキルを現場で実践しながら伝授していくという方法。
また、私たちのユニークな取り組みとして、半年に一度のチーム合宿をしています。
そこでは、チームのフェーズに応じて必要なコンテンツを実施しており、直近では企画ワークショップをやりました。「kintoneの既存顧客に対して、今はないセミナーを一つ企画してください」というテーマになっていて、3人1組で3C分析から企画書まで作成する流れです。既に企画スキルを持っている先輩メンバーがワークショップチームをファシリテートしてレビュー・フィードバックをしながら作成体験をしてもらうことで「企画ってこうやって作成するんだな」ということを体感いただきました。
お客様に対する対話力といった定性的なスキルを、現場にどう納得感を持たせて評価をしていますか?
内野:「なぜ?」が言語化できているかを評価しています。このテーマは定性的になりますし、個人の得意・不得意といった特徴もでてくるので難しい部分ではありますが、社内のロールプレイングをおこなった後のフィードバックで確認するようにしています。例えば「顧客のゴールに対して説明ができているのか」「そのコミュニケーションを通して何をヒアリングしたいのか」などを確認し、その受け答えで評価していくイメージです。
大脇:現場と定義(評価シート)の往復が大事です。納得感を持つために一番良いのは「そのスキルで設定されているレベルが最大限発揮されている現場を見てもらうこと」だと考えています。
対話力が非常に高いメンバーの現場に同席したときに、顧客からどれだけの反応が返ってくるか、場の空気がどれだけ良くなるのか、そのスキルがあるとカスタマーサクセス活動をどれほどスムーズに進めていくことができるかを実感することができます。
そのうえで、社内のスキル評価で定性的な定義や仕組みを見たときに、現場で見たことがどのように定義づけられているかを納得感を持って感じることができる。配属されてすぐにスキル評価シートを見せられたら違和感を感じるかもしれないですが、現場を体験することで腹落ちしていきます。
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株式会社KOMMONSは「働くを、傍楽(ハタラク)に」というVisionの元、国内最大級のカスタマーサクセスコミュニティを基盤に、カスタマーサクセス特化型の業務委託人材のマッチング・コンサル支援サービスを提供しています。
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