
新規事業開発の実践者たちが集い、企業の枠を超えて課題や知見を共有するBizDevコミュニティ。
新規事業のアイデアを形にしても、その先の事業成長につながらない。こうした課題の背景には、組織体制やリソース配分、既存事業部門との連携といった構造的な問題があります。
今回は、新規事業の現場と組織づくりに携わってきた株式会社アルファドライブの猪谷氏をお招きし、事業成長を阻む「1→10の壁」と、それを乗り越えるための「内部アクセラレーター」の役割についてお話しいただきました。
後半には、自社の組織機能を振り返るワークショップを実施し、参加者同士で課題や取り組みを共有しました。
【イベント概要】
開催日時:2026年10月7日(水)
開催場所:xBridge-Yaesu
タイトル:組織の壁を仕組みで超える|1→10フェーズを加速させる組織機能設計
プログラム: 講演/ワークショップ/参加者交流
登壇者:猪谷氏(株式会社アルファドライブ)
新規事業では「3年で10億円、5年で100億円」といった成長目標が設定されることがあります。しかし、こうした目標は、事業の特性や必要な投資を踏まえずに設定されているケースも少なくありません。
講演では、商品単価によって売上10億円を達成するために必要な販売数量が大きく異なることや、成長企業でも、一定の売上規模に到達するまでに長い年月を要していることが紹介されました。
売上目標と事業モデルの整合性:商品単価や販売数量、販路、利益率を踏まえて成長計画を設計する。
経営層のコミットメント:単一事業を短期間で急成長させるには、経営層の強い意思決定と大規模なリソース投入が必要になる。
事業創出の再現性:一つの事業の急成長だけを目指すのではなく、独立採算が可能な事業を継続的に生み出し、ポートフォリオとして成長させる考え方も重要。
単に高い目標を掲げるのではなく、実現に必要な条件を具体化し、経営層と現場の間で現実的な成長イメージを共有することが重要だと説明されました。
新規事業開発は、大きく0→1、1→10、10→100のフェーズに分けられます。
0→1では、社内公募やトップダウンのプロジェクトなどを通じて、比較的少人数・少額の予算で事業の可能性を検証します。
一方、10→100では、本格的な成長に向けて既存事業部門への移管や専用部門・子会社の設立などを行い、人材や資金を投入する方針が明確になります。
その中間にある1→10では、事業の成長可能性が見えてきても、誰が事業を担い、どのようにリソースを確保するかが曖昧になりがちです。
リソース配分の難しさ:事業の将来性が不確実な段階では、人材や予算を十分に確保しにくい。
既存事業部門との利害の不一致:新規事業を引き受けることで、既存事業部門に追加のコストや業務負担が生じる。
成長を担う組織の不在:事業の検証から本格的な拡大へ移行するための支援機能が整っていない。
事業開発の手法が確立されていても、組織側に成長を支える仕組みがなければ、事業は停滞してしまいます。
1→10を突破するには、個々の事業をどう育てるかだけでなく、会社として事業を成長させる組織機能を設計することが必要だと示されました。
新規事業を生み出す手段は、社内公募や研究開発だけではありません。オープンイノベーション、CVC、M&Aなど、外部の事業や技術を取り込む方法もあります。
しかし、外部から有望な事業を獲得したとしても、それを育てる組織機能がなければ、十分な成果にはつながりません。
講演では、M&A後の事業統合や経営人材の確保といった課題にも触れながら、事業の創出・獲得と、その後の育成を一体で考える必要性が説明されました。
そこで紹介されたのが「内部アクセラレーター」です。
内部アクセラレーターは、社内外から生まれた事業を受け取り、成長を支援し、適切な事業部門や組織へとつなぐ役割を担います。
事業の統括・管理:事業ポートフォリオや予算を管理し、経営層との調整やリソース配分を行う。
事業推進の支援:事業の成長段階に応じて、必要な人材・資金・専門知識を確保する。
社内外の利害調整:既存事業部門や管理部門、外部パートナーとの協力関係を構築する。
成長環境への接続:事業の特性に応じて、既存事業部門への移管、子会社化、カーブアウトなどの選択肢を検討する。
また、法務・人事・営業・品質などの専門機能を、必要なタイミングで活用できる仕組みも重要になります。
これらの機能は、必ずしも独立した部署として設置する必要はありません。組織の形よりも、事業を育てるために必要な機能が実際に働いているかどうかが重要です。
内部アクセラレーターの重要な役割の一つが、既存事業部門との利害調整です。
新規事業の成長には既存事業の営業網や顧客基盤が有効であっても、既存事業部門にとっては、新たな事業を引き受けることが負担になる場合があります。
そこで講演では、内部アクセラレーターが間に入り、既存事業部門にとってのメリットを実証する方法が紹介されました。
内部アクセラレーターが販売検証に必要な費用を負担する。
既存事業部門から営業人材を5〜10名程度、一時的に借りる。
通常の営業活動と並行して、3か月間の販売検証を実施する。
売上への貢献や追加コストを確認し、事業移管の判断につなげる。
この方法であれば、既存事業部門は大きな追加負担を負わずに、新規事業の成長可能性を確認できます。
重要なのは、「協力してほしい」と説得するだけでなく、相手にとってのメリットを具体的に示すことです。
猪谷氏は、こうした社内外の関係者とのギブアンドテイクを設計し、社内起業家が事業を育てられる環境を整えることこそ、内部アクセラレーターの重要な役割だと説明しました。
講演後には、内部アクセラレーターの組織機能を診断するシートを使い、参加者が自社の現状を振り返るワークショップを実施しました。
参加者同士で診断結果や日頃の取り組みについて意見交換を行い、今回の主な課題としては、以下の3点が挙げられました。
人材・リソースの不足:既存事業が優先され、新規事業に必要な人材や専門性を確保しにくい。
社内理解と部門間連携:新規事業に取り組む意義や、既存事業部門が協力するメリットを伝え、協力体制を築くことが難しい。
専門機能の確保とスピードの両立:法務・品質などの専門的な対応と、事業開発のスピードを両立させる必要がある。
こうした課題に対し、社内人材の一時的な活用や外部専門家との連携など、各社の工夫も共有されました。
また、参加者からは、自身が担う業務と内部インキュベーションの役割との共通点に気づいたという声も寄せられました。自社の組織機能を改めて評価することで、強みや改善点を整理でき、今後の仕組みづくりに生かしたいという前向きな感想も聞かれました。
自社の課題を客観的に捉え、他社の実践から改善のヒントを得る機会となりました。
新規事業を生み出すだけでなく、その先の成長を支えるためには、組織としての機能設計が欠かせません。
内部アクセラレーターは、社内外のリソースをつなぎ、事業の成長を後押しする重要な役割を担います。
新規事業を個人の努力だけに依存させず、組織として継続的に育てる仕組みをどう構築するか。今回のイベントは、その重要性を改めて考える機会となりました。
BizDevコミュニティでは、今後も新規事業開発に取り組む実践者同士が、課題や経験を共有し、次のアクションにつなげられる場をつくっていきます。
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