2024.12.23
【イベントレポート】成果を最大化する「カスタマーサクセスBPO」の可能性 ~導入背景から詳しい事例まで~
- CS
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近年よく耳にする「カスタマーサクセスのBPO」ですが、以下のようなお悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
・実際にどう活用できるのか想像しづらい
・興味はあるけど具体的にどう依頼すればいいのかわからない
・人手不足、属人化の課題はあるがBPOの活用の仕方がイマイチわからない
今回は、実際にCSのBPOを活用している株式会社ログラスの浅見様をお招きし、開催したパネルディスカッション形式のオンラインセミナーのレポートをお届けいたします。
CSのBPOに興味はあるけど活用方法がイマイチわからない方から、人材不足で困っているといった方までぜひご一読ください!
登壇者紹介
株式会社ログラス
事業本部長/事業執行役員VP of Revenue
浅見祐樹 氏
新卒でNPO法人に入職し、地域活性化等のソーシャルビジネスに従事。その後、エムスリーキャリア株式会社、株式会社LITALICOで新規事業の推進を担当。人材紹介サービスの事業責任者やSaaS事業企画マネージャーなどを歴任。 2021年12月から株式会社ログラスにジョイン。カスタマーサクセス部の立ち上げを担当し、マネージャーとしてチームマネジメントおよび事業計画の策定、実行を担う。PMMの立ち上げや新規事業開発を経て、2024年6月より事業本部長/事業執行役員VP of Revenueに就任。
株式会社ATOMica Platform開発本部/KOMMONSカンパニー
COO
大竹健斗 氏
新卒でリクルートスタッフィングに入社し、派遣・BPO領域の営業と就業マネジメントの経験を経て2016年にAIスタートアップに創業メンバーとして参画。営業・PM・CSの順に組織立上げをし、カスタマーサクセス部の部長を数年勤めたのちCOO就任。2023年、Success Goal Lab.を創業し、業務設計から行うカスタマーサクセスBPO事業を行い、カスタマーサクセス起点での事業開発支援を実行。2024年10月より、株式会社ATOMica KOMMONSカンパニーのCOOに就任し、SaaS×都内に限らずサブスク×全国へのCX支援を行う。
株式会社ATOMica Platform開発本部 /KOMMONSカンパニー
CEO
白塚湧士 氏
新卒で総合商社に入社。CX領域への投資業務を担当。コールセンター事業会社に出向し、カスタマーサクセス・サポートチームのMGR業務に従事。
スタートアップでのカスタマーサクセス立上げを経て、KOMMONSを創業。累計100件以上のCS業務設計・BPO案件に携わる。
1,200名が登録する国内最大級のCSコミュニティ「CS KOMMONS」を運営し、CSキャリアを支援。2024年10月より、株式会社ATOMica Platform開発本部 / KOMMONSカンパニーCEOに就任し、DX / CX支援を実施。
CS BPOが求められている背景
近年カスタマーサクセスの求人数は増加している一方で、カスタマーサクセスの人材不足は顕在化*している状態です。カスタマーサクセスという職種が持つ特性である「組織内でのファンクション・役割に応じて多様な業務領域のスキルや経験が求められる」ということもその理由の一つと言えるでしょう。
*カスタマーサクセスに取り組む企業のうち、人材の育成・採用に課題がある企業は全体の66%にのぼり、54%だった2021年からさらに増加が続いている。(カスタマーサクセス実態調査2023年度版)
また、組織フェーズに合わせて必要なスキルも変わっていく中で、すべての業務を正社員で行ない、固定費を抱えていくことになると、組織フェーズが変わった際に適切なスピード感で社員がスキルアップをできなかった場合、粗利率の低下に繋がってしまうことも課題だと考えています。
正社員よりも早い採用スピードで人材確保ができることや注力領域に社内リソースを集中できることなどからも、いま新たな手法としてBPO(=業務プロセスの一部を一括して専門業者に外部委託すること)が注目され始めています。
CS BPOに依頼すべき業務とは?
「定常業務」と「スポット業務」の軸に対して、専門性の度合いを踏まえてセグメントをすると、大きく以下2つの領域でBPOを活用すると上手くいきやすいでしょう。
・「定常業務」かつ「専門性が低い」領域
・「スポット業務」かつ「専門性が高い」領域
この部分については、実際にCS BPOを活用している株式会社ログラスの事例とともに詳細をお伝えしていきたいと思います。
CS BPO活用事例(株式会社ログラス)
ここからは実際にCS BPOを活用している株式会社ログラスの活用事例を浅見より紹介いたします。
弊社株式会社ログラスのCS組織は3年前はCS担当はわずか2名でした。そこから組織が大きくなり、現在CS組織は主に5つの機能に分かれています。
①オンボーディング:導入初期の活用支援を行う部隊
②アカウントマネージャー:リニューアルによる継続意思の獲得ならびに活用範囲を拡張するエクスパンション(カスタマーセールス的な役割)を行う部隊
③カスタマーサポート:お客様が安定した運用ができるような支援を行う部隊
④Ops:社内のオペレーションやデータベースの構築を行う部隊
⑤プロフェッショナルサービス:導入が難しいプロダクトの支援を専門に行う部隊
こうした組織体制は始めから構想していたというものではなく、組織の急拡大とともに組織フェーズが変わる中で必要な役割を検討し、作り上げてきたものと言えます。
そんな中で、約2年前にKOMMONSさんへCS BPOを依頼させていただきました。
当時、組織ではオンボーディングしかできていなかったという状況でした。
毎月毎月、先月よりも早いペースで新規顧客が入ってくるため、まずは新しく入ってくるお客様にしっかり活用してもらうことに向き合うことで手一杯だったのです。
一方で、どんどん新規顧客が増えていく中で、恒常的に顧客の支援ができているか?やオンボーディングもべた張りで属人的に対応し続けていくのを見直すべきではないか?という課題感からBPOの依頼をさせていただきました。
現在、BPOを導入し、支援いただいている領域は大きく以下の2つです。
①オンボーディング:導入初期の活用支援を行う部隊
③カスタマーサポート:お客様が安定した運用ができるような支援を行う部隊
単純に人手が足りないという理由で依頼しているというよりは、先程の話にあったBPOに依頼すべき業務領域である「定常業務」かつ「専門性が低い」領域または「スポット業務」かつ「専門性が高い」領域というのを意識して依頼をしています。
<オンボーディングの事例>
Before
正社員がべったり1社に1名張り付き、粘り強く活用できるまでオンボーディングの支援をするやり方のみ
⇒課題:複雑なプロダクトのレクチャーを人海戦術だけで乗り切ることができない
After
複数の顧客に集まって集合研修的にレクチャーを行なうかたちの支援をBPOで実現
⇒効率的な支援の仕組み化とともに、講師もBPOに委託することで業務負担も軽減
<カスタマーサポートの事例>
Before
Slackやメールで来る顧客の問い合わせに1件ずつ頑張って返信する方法のみ
⇒課題:面での対応ができず、個別での支援による工数負担と属人化が起こってしまう
After
正社員が始めたチャットボットなどの仕組み化の取り組みを恒常的に運用できるようになった
⇒回答対応までBPOに委託することでスピードが早くなり、対応品質の向上にも繋がった
どちらの事例も組織フェーズの変化による新たな取り組みを行なう際に、CS BPOという手法を活用してKOMMONSさんと一緒にやってきたと思っています。
CS BPOの支援範囲
先程お話いただいた株式会社ログラスの事例からさらに詳細なCS BPOの支援範囲について大竹よりご紹介いたします。
ログラスさんの2年間の支援の中で行なってきたことの変遷をまとめたのが以下のスライドです。先のお話にもあった「オンボーディング」と「カスタマーサポート」の細かい業務内容が横軸にあります。
まずは属人化していたオンボーディング業務の標準化のご支援から始まり、そこから集合研修の支援へ。さらにカスタマーサポートへ支援領域を広げ、これまでSlackに来ていた問い合わせをZendeskを導入し問い合わせ対応の運用整備をする支援も行なってきました。
単純な問い合わせ対応だけではなく、よくある問い合わせのFAQ作成やサポートコンテンツへ反映することで顧客自身が自己解決できる動線を整備するという部分(セルフオンボの促進)も支援をしてきました。
また、今後の取り組みとして、事業範囲が拡大する中で新しいプロダクトのCS体制を構築する際にも横展開をしていくことも予定しています。
CS BPOでご支援できる業務の一覧も以下にまとめていますので、もしこういった業務について「手が回っていない」「社員が必ずしもやらなくてもいいかも」と思うものがあれば、KOMMONSでもご支援が可能です。
CS BPOの導入の流れ
一般的にCS BPOを導入する際は、依頼する業務の粒度によってはあらかじめ自社内で業務整理をすることが一定必要となります。
実際にKOMMONSでBPOを導入するとなった場合も、まずはAs-Is/To-Beを整理するところからご支援を始め、整理をする中で特定した課題に対してどのように業務を設計するのがよいのかを壁打ちをしながら支援の詳細を決めていきます。
BPOと聞くと、業務整理が終わったあとにどこを切り出すか?というところから始まるのではないかとイメージされる方も多くいらっしゃいますが、KOMMONSの場合はBPOと言いつつも壁打ちだけの支援をするケースもあり、柔軟に対応しています。
また、BPOとして実際に業務に入らせていただく上で、KOMMONSでは特に以下3つの工夫をしています。
1.いかに顧客の業務とカルチャーをキャッチアップし、溶け込むか
2.いかに人員追加/代替時のオンボーディングコストを下げて提供できるか
3.いかに顧客と稼働スタッフ双方の期待値を擦り合わせプロジェクトマネジメントするか
この3つが上手くいけばBPOの導入支援は上手くいきますし、逆にどれか1つでも欠けてしまうと上手くいかなくなってしまうと言えます。
パネルディスカッション
最後に、パネルディスカッション形式で3つのテーマについてお話をしていきたいと思います。
Q1.業務委託人材・BPOを活用し始める最適なタイミングは?
浅見)このままでは半年、1年先が見えないと感じたタイミングで導入を決めました。採用ももちろん頑張るものの、組織の急成長と同じペースで採用ができるのかという観点とCS組織の立ち上げフェーズでケイパビリティも十分ではない状態を踏まえ、時間やケイパビリティの前借りしていくイメージで導入しました。
大竹)BPOと言うと一般的には業務をより効率化していく、予算を下げるという観点でイメージされがちですが、むしろ浅見さんが仰ったように立ち上げのフェーズに実はすごく効果があるので事業成長の特急券的な役割でのBPO活用というのもおすすめしたいですね。
インサイドセールス等とは異なり、CSの場合は事業フェーズごとに求められる役割も変わってくるため、初期からどこでBPOを使うか?を考えておけるといいなと思っています。
白塚)立ち上げフェーズでBPOを活用するというのは業界的にはまだ先進的と言える気もするのですが、そういった中でも踏み切れた理由というのは?
浅見)基本的に、社内にすべてを内製化するという発想がなく、適切に外部を活用することを受け入れる土壌があったのは大きかったと思います。その上で、見ていく時間軸が重要だと思います。目の前の数ヶ月なら他の手段もありますが、中長期の視点で見ると社内での承認も取りやすくなると思います。
Q2.業務委託人材・BPOを活用するメリットと気をつけるべきポイント
浅見)BPOは、受け入れ側と委託先の双方で協力し合って初めて成果が出るものと思っています。受け入れ側の工夫としては以下の2つがあります。
・同じチームとしてやっていく雰囲気づくり
・タスクベースではなく、イシューベースの相談をする
CSの特徴としていろんな組織と関わることが多いため、そういった意味でも他チームとの接続が上手くいくような雰囲気づくりが重要だと思います。
また、タスクを依頼するだけではなく、組織のイシューを一緒に解決していくためにも、細部の依頼タスクの話に入る前にイシューを話して全体像を伝えることから始めることで投資価値も最大化できると思っています。
白塚)BPOではベンダー側も依頼先に対して「何をしてほしいですか?」というコミュニケーションを取りがちで、タスクベースで仕事を請け負ってしまいがちですよね。
大竹)そうですね。ベンダー側の目線だと、期待値を明確にすることも重要かなと思います。ふわっとした依頼を受けてしまうと、成果もふわっとしてしまうので、そういった意味でも受け入れ側のログラスさんとしっかり擦り合わせた上で動けたことは大きかったと感じます。
あとは、BPOのメリットにも触れておくと、固定費を変動費化できるというのは大きいと思います。CSの場合は役割変化があるため、固定費として良いかについてCSマネージャーのみなさんも悩まれる部分が多いかなと。また、採用が難航している際にもスピード感を持って人材確保ができるのは大きなメリットだと思います。
Q3.カスタマーサクセスBPOの今後の展望は?
浅見)カスタマーサクセス組織の進化においてBPOは一つのトレンドになりそうだなと感じています。CSは事業フェーズが変われば役割や比重が変わっていくのがポイントだと思っていて、ファンクションの立ち上げみたいなものは随時行われていくと思うんです。
そこを短期でやりきらなければいけないという中で、時間やケイパビリティの前借りをBPOというベンダーさんの力を借りてパートナーとして、一緒にイシューを解決していけるのは強い方法だと感じています。信頼関係を築きながら取り組めるBPOという手法は良いものだと感じているので、広まっていってほしいなと思っています。
大竹)CS BPOにおいては、究極的にはいかに効率的にオペレーションを組めるかみたいなところが最終ゴールでありながらも、初期の頃は事業開発的な取り組みをしなければいけないという、このギャップが極めて大きいファンクションだなと思っています。
最終的には誰がやっても一番効率的になるようなオペレーションを組まなければいけないんですが、初期の頃はそれを見つけるためにめちゃくちゃハイタッチでお客様に対してアグレッシブにやらなければいけないというところのギャップをどう埋めるかとなったときに、正社員でやり切るのは経営的にも合理的じゃないよねとなると思うので、BPOベンダーとしてもこの部分を一緒にやらせてもらえる余地は大きいと確信しています。
また、自社の業務を整理し言語化できない企業の場合は、BPOという特急券を買えないということになるので、事業成長のスピードに差が出るのではないかと思っています。逆説的ではありますが、BPOベンダーを使える企業の方が事業成長が早くなるのではないかとも思っています。
さいごに
株式会社ATOMica Platform開発本部 KOMMONSカンパニーでは、カスタマーサクセスのBPO支援、DX支援、国内最大級のCSコミュニティの運営などを行なっています。
ご興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
この記事を書いた人
枝川 文香
SaaS企業のカスタマーサクセスマネージャー。「カスタマーサクセス」という言葉が日本に浸透し始めた2018年頃からCSとしてのキャリアをスタート。より深くCSを学び、自身の経験・キャリアも広げていきたいと思い、同僚の紹介を受けてKOMMONSにてWeb記事のライティングを担当しています。