コンサルティング

3商材を横断するCS組織において職種要件を明確にし、CSとして社内でどう成長できるか、キャリアパスを示せる状態を実現する
DMMチャットブースト/STAR BOOST/DMM ジオブースト の3商材で事業フェーズが異なり、求められるCS要件にバラつき。横断的にCSを評価する制度・指針がなく、次の一手が各事業部の体感値に依存
CS組織内の職種定義・スキルの可視化がなく、「何をしたら評価されるのか」「どのようなキャリアを目指せば良いのか」が見えない
事業部横断の最適配置ができていれば防げた可能性のある、ハイパフォーマーの離職が発生
CS組織診断・CSタイプ診断(3事業部+OPS課の全員)、マネージャー全員との個別面談
3職種(サクセス/サポート/OPS)の定義と、職種別スタンス5項目×スキル9項目のレベル設計
等級フレームワーク(入学要件/卒業要件モデル)の設計、等級判定・スモールテスト、運用方針の整理
約2ヶ月半で制度設計を完了し(「1人でやっていたら半年はかかった」)、正社員全員の等級判定を経て新制度の運用を開始
マネージャー陣に「共通言語」が生まれ、目標設計のスコープが自発的に他部門へ拡大。メンバーからも自発的な施策起案が生まれる組織に変化
CS先行の等級整備が全社に波及し、社長の号令のもと全職種のグレード・要件整理プロジェクトが始動
―― まず、DMM Boost様の事業と、CS組織の体制について教えてください。
江幡様:DMM Boostは合同会社DMM.comのグループ会社で、店舗・企業向けに3つのプロダクトを展開しています。LINEの拡張機能として提供するチャットブースト、GoogleマップのMEO対策を支援するDMM ジオブースト、インフルエンサーと事業者のマッチングサービスであるSTAR BOOSTです。それぞれが事業部として独立していて、各事業部にCSチームが置かれています。
CSは各事業部に5〜8名ずつ、それに加えて横断組織としてCSオペレーションチームが1つあります。問い合わせの一次受けやオンボーディングの初期設定をメインに、データ分析までを担うチームです。全部で4チーム、正社員・派遣・業務委託を合わせて30名ほど。全社に占める比率でいうと約3割で、社内で最も人数の多い職種がCSです。
テックタッチやロータッチ・AI化の最適配分により、少人数での顧客対応を実現してきました。個人の力に頼るのではなく、テックタッチ・ロータッチ化やAI化を進めて今の人数になりました。ありがたいことに、昔からCSに対して人件費を割いてくれる会社ではありました。

―― 3つのプロダクトは、事業フェーズもかなり異なると伺っています。
江幡様:ローンチから何年も経っており安定している事業もあれば、まだまだ成長期の事業や転換期の事業もあります。フェーズが違えばCSに求められることも変わる。ところが、人材の成長やCS組織の課題に対して定量的かつ明瞭な指標がなく、その都度個別に対応せざるを得ない状態でした。肌感だけに頼っていたわけではないのですが、人材の成長指針と事業の方針がうまく噛み合っていない、というもどかしさが、今回お願いした背景の一つです。
―― 大西様は事業部のCSマネージャーとして、フェーズの違いをどう感じていますか。
大西様:フェーズが違うので、それぞれの事業部で当たる壁も異なります。ただ、だからこそ良い面もあって、先を行く事業部の課題が共有されると「うちも近い方向に進んでいるから、この課題を先に潰しておこう」と事前準備ができる。マルチプロダクトならではの環境だと思います。
―― 世の中的にも、CSには解約阻止だけでなく売上への貢献が求められるようになっています。御社ではいかがですか。
江幡様:まったく同じことが社内でも求められるようになってきました。売上拡大、エクスパンションに挑戦していく、という指針は出ています。実はこれまでもトライしたことがないわけではなくて、半期目標にトスアップ件数や成約件数を入れて一部の事業部で追ってみたことがあるんです。ただ、文化として根付かなかった。
そういう失敗を経て、今回CSの役務を考えるプロジェクトをやったときに、改めて「売上をちゃんと引っ張っていける組織になろう」という意思が固まりました。次の半期、そして1年・3年の目標には、そうした目標感が加わってくると思います。
―― 今回、評価制度・等級設計のご支援を依頼された背景を教えてください。
江幡様:私がCS全体を見るポジションになったのが2025年の夏です。全体を見たとき最初に思ったのが、「CSとして次に何をやればいいのか、どういうキャリアの道筋があるのかが見えない組織だ」ということでした。これは私がメンバーやマネージャーだった3年間、ずっと感じていた課題でもありました。
メンバーのスキルや経験が可視化されていないので、ある事業への興味関心が薄れてしまったとき、本当は他の事業部に転換できれば良かったのに、それが叶わないまま退職してしまうパターンが実際にありました。特に辞めていくのはハイパフォーマーが多い。その事業で求める知識は得たけれど、もっとお客様をサクセスさせたいという気持ちが今の組織では叶わない、と他社に行ってしまう。スキルや経験が言語化されてデータとして蓄積されていれば、部署異動で防げたはずでした。これが過去の反省です。
―― 外部に依頼する前に、ご自身でも取り組まれたそうですね。
江幡様:最初の半年は、社内にあるデータや過去の人事情報からひも解くことをやりました。これまでどういう査定をしてきたのか、どういうKGI・KPI設計をしてきたのか。全部洗い出したうえで他社のCSの情報も取りに行ったのですが、社内の情報だけではどうにもならないと感じ、カスタマーサクセスの専門知識のある外部の方の話を聞きたい、という気持ちが募っていきました。
―― 数ある選択肢の中で、KOMMONSを選んでいただいた決め手は何でしたか。
江幡様:実は他にも何社かお話を聞きました。ただ、2023年頃に一度、KOMMONSさんに支援いただいたことがあるんです。当時はあるプロダクトで、カスタマーサクセスとしてオンボーディングやアダプションで何をすればいいのか、ヘルススコアの設計もない状態で、そのイロハを教えてもらった。私はマネージャーとして参画していて、その記憶が強く残っていました。だから今回も迷いがなかった。「あのときと同じことを、今度は組織全体でやってもらえそうだ」という感覚があったんです。
ご提案の際に「こういうアウトプットを作ります」と最初に提示いただいて、それが自分の思い描いていたものと合っていた、というのも決め手でした。もう一つ挙げるなら、業界でのイメージです。どこのコミュニティに顔を出してもKOMMONSさんの名前が出てくるし、「あそこはこういうことをやってくれるよね」という評判を実際に聞く。それも背中を押しました。
―― プロジェクトはどのように進んだのでしょうか。
KOMMONS 大河内:3事業部でフェーズも期待値も違う組織をどうキャッチアップするか。最初に全員に組織診断・CSタイプ診断を受けていただくところから始めました。診断があったことで、お互いの業務理解が早かったと思います。あれがなければ「あるべき姿」ばかり話してしまい、「ちょっと違うんだけどな」というラリーが続いていたかもしれません。
江幡様:同じ感覚です。あるべき論を話すのは簡単ですが、実態に沿わないと運用に乗らない。診断の後にマネージャー全員と1on1もしていただいて、そこで一気に解像度が上がった感覚があります。実際、あれをやる前と後で、週次定例の中身が濃く変わりました。私だけでなく、現場に入り込んで実際の声を拾いに行っていただけたのがありがたかったですね。


―― 大西様は、診断を受けてみていかがでしたか。
大西様:もともと診断が好きなタイプなので受け入れやすかったのですが、結果を見て驚きました。「この人はこういうタイプだな」と感覚では持っていたものが、うまく言語化できていなかったし、実際の業務のどこを指すのかも紐付いていなかった。それが一気に一本化されたんです。もともと「チームの中にこういう役割を作りたい」という構想があったので、配置が一気にスムーズになりました。チームビルディングの入り口が大きく開いた感覚です。
―― 診断結果を、ご自身のチームのワークショップにも展開されたそうですね。
大西様:診断結果と、みんなの足元の業務を一つずつ突合して、「あなたのこの特徴は、この業務のことを指しているよ」と噛み砕いた資料を追加で作りました。それをワークショップの冒頭で落とし込んだうえで、価値観を共有するゲームや、NASAゲーム──宇宙船に戻るためにアイテムの優先順位をチームで決めるワーク──をやったんです。ロジックで考える人、気持ちの視点で考える人、それぞれの発言の意図と価値観がある程度腹落ちした状態なので、「この人は何を言ってるんだろう」とならずに、すごく活発に議論が進みました。相手の言いたいことを正しく汲み取る、コミュニケーションの土台ができたと感じています。

―― そこから、職種定義と等級設計に入っていきます。
KOMMONS 大河内:CS内の職種を「サクセス/サポート/OPS」の3つに整理し、職種ごとにスタンスとスキルのレベル定義を作っていきました。KOMMONSが一方的に作るのではなく、江幡さんと各事業部のマネージャーの方々に毎週の定例で叩いていただき、DMM Boostさんの言葉に置き換えていくプロセスです。

―― 進める中で、難しかったのはどんな点でしたか。
江幡様:とにもかくにも「言葉の意味の解釈合わせ」ですね。週に1回、多いときは2〜3回、マネージャー全員と等級・レベル・スキル・スタンスといった言葉の意味をすり合わせました。それだけ時間をかけたのに、メンバーに展開してみるとまた新しい「はてな」が出てくる。本当に大変でした。ただ、大変だったからこそマネージャー全員の中にストンと落ちていて、自分の言葉でメンバーに説明できるようになっている。一番大変なところを乗り越えた甲斐があったと思います。
メンバー2〜3名でスモールテストもやりました。自己評価→根拠を残す→上長評価→面談、という流れです。やってみると「このプロジェクトをやったから満点です」と、頻度や大小の基準が明文化されていないと、自己評価と他者評価にギャップが出てしまうことがわかった。説明しただけでは伝わらない。マネージャーがそこの認識合わせをしていく作業は、引き続きのテーマです。
―― 新しい等級を現場のメンバーに伝えるのは、難しさもあったと思います。大西様はどのように落とし込みましたか。
大西様:少しずるい言い方ですが、外部のコンサルティング会社が、いろいろな会社を見たうえで設計してくれている、という事実を後ろ盾にしました。今までの評価はあくまで社内だけの話。このキャリアパスは、みんながここじゃなくても活躍できる状態を理想に、外の市場のレベル感に合わせて再設計されている──そう伝えたんです。
大前提として「あなたの能力が低い」とは絶対に伝わってほしくなかった。メンバー間に能力の差分はなくて、あくまで経験や機会に恵まれなかっただけ、適材適所もある。そのうえで「今後はこう権限移譲していく。これを任せたいから、ここができれば次の等級に上がれるよ。今はこういう状態だからここだよね」と、現在地を正しく伝えることを意識しました。この言葉選びが、いちばん大変でしたね。
KOMMONS 大河内:外部の人間を「言い訳」に使っていただくのは、まさに外から入る価値の一つだと思っています。
―― プロジェクトを経て、組織にはどのような変化がありましたか。
江幡様:まず、マネージャー陣と「共通言語」ができたことが一番の変化です。今回、全等級・全職種に対して定義を作りましたが、上位等級の定義文には「組織横断で成果を出す」「定量的な成果」といった文言を、マネージャーたち自身が同意して入れています。自分で入れた以上はやらなきゃいけない、という使命感が生まれた。制度が出来上がったのは7月ですが、この7月・8月だけでも、意識的な動きが目に見えて出てきています。
象徴的なのは目標設計です。ちょうど今、次の半期の目標設計期間なのですが、今までは「CSの中で何かの数値をどうにかする」という目標ばかりだった。それが、CSで得たノウハウやナレッジを営業獲得に活かす、プロダクトフィードバックに活かす、というところまでスコープを広げて目標を設計するチームやマネージャーが出てきた。私が強制したわけではなく、自分たちから出てきたのが本当に嬉しいですね。

―― 大西様は、現場に最も近い立場からメンバーの変化をどう感じていますか。
大西様:メンバーの行動がだいぶ変わりました。私のチームでは「施策は基本的に私が考えて落とす」形をやめると宣言したんです。責任は私が全部負うから、何をするかはみんなで考えてほしい、と。大きな権限を渡すことを伝えました。
そうしたら、あるメンバーが自分から施策を起案して、私のカレンダーに勝手にミーティングを入れてくるようになったんです。「この課題に本当に危機感を持っている。この施策を通すならどう組み立てればいいか」と相談に来る。今までのフィードバックを活かしながら、自分からアクションする姿にすごく成長を感じました。しかもこれが1人だけでなく、徐々にいろんなメンバーに広がっている。診断でリーダー的なタイプと出たメンバーが、定例で真っ先に意見を言ってくれるようになった、という変化もあります。
―― マネージャーであるご自身にも、変化はありましたか。
大西様:権限移譲でできた時間を、私自身の挑戦に使えるようになりました。承認を得たうえでAIツールを導入して、事業部で使う社内システムを自分で作って導入までやったんです。追加の機能開発も進めていく承認をもらっています。メンバーのためにやってきたことですが、マネージャー自身も変われた、というのは素直に嬉しいですね。
KOMMONS 大河内:外から見ていても、この変化のスピードは驚きでした。私たちは「カスタマーサクセス経営」──CSを起点に会社全体でLTV最大化を目指す考え方を掲げていますが、正直、多くの会社ではそう簡単には進みません。DMM Boostさんは、マネージャーの方々が自ら他部門を巻き込みに行くところまで、一気に進んだ手応えを感じました。
―― 今回の取り組みは、CS部門の中にとどまらなかったと伺いました。
江幡様:プロジェクトを始めてから、隔週で部長陣に進捗を共有し続けていました。「こんなふうに変わったんだ」「ここまでやっているんだ」という興味関心の土台ができていたところに、6月・7月に成果物が出てきて、一気に評価されるようになった。「CSがここまで独自で真剣に評価設計に取り組んでいるのか」と。「うちの部門でもやらなきゃいけないね」という声が他の部の部長陣からも出てくるようになりました。
現状は、今CSとエンジニアだけが独自の等級制度を持っている状態ですが、全社統合でグレード設計を見直そうという社長の号令が下りました。来年の1月・2月頃までに設計して、我々が作ったものを合流させにいく動きが、この半年で出てくると思います。
―― キャリアパスの面でも、変化はありそうですか。
江幡様:CSからプロダクトや営業に移って活躍している人は、実は以前からいるんです。ただそれは「顧客解像度が高いから」という、割とふわっとした見解のもとの異動でした。今回の制度設計で、「この人はこういうスタンスとスキルを持っている」と明確に言えるようになる。今まであった人事異動に確からしさを持たせる後押しになると思うので、ここは中長期で見ていきたいですね。
KOMMONS 白塚:CSの現場で培われる力は、どの部署に行っても活きるものだと思っています。それが「スタンス」「スキル」として言語化されたことで、これまで感覚的だった異動の判断にも確からしさを持たせられるようになった。CSが社内の人材輩出機関になっていくと、CSを起点にできることがより広がっていきそうですね。
―― 外部の支援を受けたことで、実際どれくらい違ったと感じますか。
江幡様:定量化は難しいですが、事実として、プロジェクトは4月に始まり、6月中旬には大枠が完成、最後のチューニングも7月下旬に終わりました。ゴールデンウィークを挟んで実質2ヶ月半で、制度を作り切りました。1人では絶対に無理でしたし、マネージャーとの意思疎通も、私1人でやるのとは速度感が違った。外部の視点が入ることで、自分たちだけでは気づけなかったキャリアパスや自己効力感の課題が可視化され、それを社外の市場価値の軸に照らして整理できました。「第三者に入ってもらってリソースを使っている」という事実があるからこそ「やらなきゃ」という気持ちも生まれますし、実際にメンバーのパフォーマンスが上がる兆しも出てきています。外部の力を借りなければ、半年はかかっていたんじゃないでしょうか。
―― 今後の取り組みについて教えてください。
江幡様:まずは運用をちゃんと乗せることです。各メンバーとのレベルのすり合わせを終えて、この半期でどのスキル・スタンスを伸ばすかをピックアップした段階。時間が経つとどうしても忘れてしまうので、絶えず思い出しながら「次に何をすればいいんだっけ」を確認していく。この半年やり切って、全社制度と合流させにいくのが直近の目標です。制度は作った、次はどう中身を伸ばすかが論点です。教育が次のテーマで、ちょうど先週、役員会でも教育へのリソース投下が話題に上がり、希望者向けに講座などを受けられるようにするのはどうか?という動きが出てきています。まだ決定事項はないものの、経営層が育成に目を向けてくれているのが嬉しいですし、この波に乗せて、私からもメンバーに提供できるものを増やしていきたい。
大西様:半期ごとの目標設定に、スキル・スタンスの紐付けを組み込み始めています。ゆくゆくは、メンバー自身が伸ばしたいスキルを自分で選択して、自分の大きな目標に紐付けていくことが仕組み化された状態にしたい。その結果、本人が実感できるスキル向上が実現できたら、すごく嬉しいですね。
―― 最後に、KOMMONSのような支援は、どのような会社にフィットすると思われますか。
江幡様:全企業、だと思います。というのも、私は2回支援を受けているんです。前回はCSのイロハがわからない初期フェーズで、イロハを作ってもらった。今回は、私自身も丸4年CSをやってある程度わかったうえで、より高みを、他社のスタンダードや市場観に合わせていきたいという依頼でした。フェーズがまったく違う2回のどちらでもマッチした。どのコミュニティに顔を出してもKOMMONSさんの名前が出てくる理由が、2回目を受けて改めてわかりました。いろんな会社さんに届いてほしいですね。