2025.09.30
カスタマーサポートのKPIは3つだけでOK!目標設定から上司への報告方法まで徹底解説
CSブログ
「カスタマーサポート部門を立ち上げたはいいけれど、成果をどう測ればいいんだろう…」「KPIの種類が多すぎて、どれを目標にすれば良いのか全くわからない」「上司に説明できるような、納得感のある目標設定の例が知りたい」——そんな悩みを抱えていませんか。
カスタマーサポートの目標設定は、多くの担当者が最初にぶつかる大きな壁です。
インターネットで調べると無数の指標(KPI)が見つかりますが、情報が多すぎるゆえに、自社の、特に「立ち上げ期」において本当に重要なものが何なのか判断できず、思考が停止してしまうことも少なくありません。
この記事を読めば、もう迷うことはありません。
立ち上げ期に本当に注力すべき3つのKPIから、チームで実行できる目標設定の具体的な5ステップ、そして上司への報告まで、あなたが自信を持って第一歩を踏み出すための全てがわかります。
この記事の結論
- 立ち上げ期のカスタマーサポートで設定すべきKPIは「初回解決率」「顧客満足度(CSAT)」「平均応答時間」の3つに絞るのが現実的で効果的です。
- KPI設定は、会社の最終目標(KGI)である「解約率の低減」や「売上向上」にどう貢献するかを意識することが、上司の納得を得る鍵です。
- 高価なツールは不要です。まずは共有のスプレEDシートで数値を記録・共有し、運用サイクルを確立することから始めましょう。
- KPIの数値だけでなく、顧客からの「ありがとう」の数など、チームのモチベーションに繋がる定性的な指標も合わせて追うことが大切です。

そもそもカスタマーサポートにおけるKPIとは?KGIとの違い
目標設定の話を進める前に、基本となる言葉の定義をしっかり押さえておきましょう。
「KPI」という言葉はよく聞くけれど、KGIとの違いをはっきり説明できますか?
この関係性を理解することが、納得感のある目標設定の第一歩になります。
一言でいうと、以下のようになります。
- KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標。組織の最終目標。
- KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標。KGIを達成するための中間指標。
登山に例えると、登る山の頂上が「KGI」です。
そして、頂上にたどり着くために通過すべきチェックポイント(例:「5合目まで〇時間で到着する」)が「KPI」にあたります。
カスタマーサポート部門の場合、KGIは会社の事業目標と連動します。
例えば、「年間解約率を5%未満に抑える」や「顧客単価を10%向上させる」といったものがKGIです。
そして、そのKGIを達成するために、「顧客満足度を90%以上にする」「問い合わせへの初回解決率を80%にする」といった具体的な行動目標が、カスタマーサポートのKPIとなるわけです。
なぜ、カスタマーサポートでKPIが重要なのでしょうか。
それは、チームの活動が会社の利益にどう貢献しているかを客観的な数字で示し、「コストセンター」ではなく「プロフィットセンター(利益を生む部門)」としての価値を証明するためです。
正しいKPI設定は、チームの進むべき方向を示す「羅針盤」であり、あなたの部門とキャリアを守る「盾」にもなるのです。
【結論】立ち上げ期に設定すべきカスタマーサポートのKPIはたった3つ
情報が溢れる中で、部門の立ち上げという重要な時期に、あなたが設定すべきカスタマーサポートのKPIは、結論から言うとたった3つで十分です。
あれもこれもと多くの指標を追いかけると、計測に手間がかかるばかりか、結局どれが重要なのか分からなくなってしまいます。
大切なのは、事業の成長に直結する最も重要なポイントに絞り込むこと。
業界のベストプラクティスとしても推奨されている、以下の3つの観点からKPIを設定しましょう。
- 品質:初回解決率(FCR)
- 顧客満足度:顧客満足度スコア(CSAT)
- 効率:平均応答時間(ART)
この3つは、顧客体験の根幹をなし、かつ業務効率にも直結する、いわばカスタマーサポートの「三種の神器」です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 品質を測る指標:初回解決率(FCR)
初回解決率(First Contact Resolution)とは、お客様からの問い合わせが、最初の1回のやり取りで解決した割合を示す指標です。
何度も電話やメールを繰り返す必要がなく、一度で問題がスッキリ解決すれば、顧客のストレスは大幅に軽減されますよね。
計算式はシンプルです。
初回解決率(%) = (初回接触で解決した問い合わせ数 ÷ 全問い合わせ数) × 100
この数値が高いほど、サポートの「品質」が高いと言えます。
顧客満足度に直結するだけでなく、何度もやり取りする手間が省けるため、オペレーターの業務効率も向上します。
立ち上げ期において、まず目指すべきは「的確で質の高いサポート」の土台を作ること。
そのために、初回解決率は最も重要な品質指標の一つなのです。
2. 顧客満足度を測る指標:顧客満足度スコア(CSAT)
顧客満足度スコア(Customer Satisfaction Score)は、その名の通り、お客様がサポート対応にどれだけ満足したかを直接的に測る指標です。
一般的には、問い合わせが解決した直後に簡単なアンケートを送って計測します。
例えば、以下のような質問です。
「本日のサポート対応にご満足いただけましたか?」
- 5: 非常に満足
- 4: 満足
- 3: 普通
- 2: 不満
- 1: 非常に不満
計算式は以下の通りです。
顧客満足度(%) = (「満足」「非常に満足」と回答した人数 ÷ 全回答者数) × 100
CSATの素晴らしい点は、顧客の「生の声」を数値化できることです。
このスコアを定期的に観測することで、サービス改善のヒントを得たり、特定のオペレーターの素晴らしい対応を発見したりできます。
お客様がどう感じているかを知らずして、サービスの向上はありえません。
CSATは、顧客中心の文化をチームに根付かせるための第一歩となる指標です。
3. 効率を測る指標:平均応答時間(ART)
平均応答時間(Average Response Time)は、お客様から問い合わせが入ってから、オペレーターが最初に応答するまでにかかった時間の平均値です。
電話なら「もしもし」と出るまで、メールなら最初の返信を送るまでの時間ですね。
誰しも、問い合わせをしてから延々と待たされるのは嫌なものです。
迅速なレスポンスは、それだけでお客様に安心感を与え、企業の信頼性を高めます。
計算式は以下の通りです。
平均応答時間 = 全ての初回応答にかかった時間の合計 ÷ 全問い合わせ数
この指標を計測することで、チームの応答速度を客観的に把握できます。
もし時間がかかりすぎているなら、人員が不足しているのか、あるいは業務プロセスに問題があるのか、といった課題を発見するきっかけになります。
「品質」や「満足度」はもちろん重要ですが、「スピード」という効率の観点も、優れた顧客体験には不可欠な要素なのです。
失敗しないカスタマーサポートの目標設定5つのステップ
ここからは、そのKPIをチームで達成可能な「生きた目標」に変えるための、具体的な5つのステップを見ていきましょう。
このステップ通りに進めれば、初めての方でも失敗しないカスタマーサポートの目標設定ができますよ。
ステップ1:事業目標(KGI)と連携させる
最初のステップが最も重要です。
それは、自分たちが設定するKPIが、会社全体の最終目標(KGI)にどう貢献するのか、その繋がりを明確にすることです。
まずは、上司や関連部署にヒアリングして、会社が今期目指しているKGIを確認しましょう。
例えば、会社のKGIが「解約率を前期比で20%削減する」ことだとします。
その場合、あなたのチームの目標はこう説明できます。
「顧客満足度(CSAT)を90%以上に維持することで、顧客ロイヤルティを高め、解約率20%削減という会社のKGI達成に貢献します」
このように、自分たちの活動が事業成長にどう繋がるかを語れるようにしておくこと。
これが、経営層を納得させ、予算や人員を獲得するための強力な武器になります。
ステップ2:現実的な目標数値を設定する
次に、3つのKPIそれぞれに具体的な目標数値を設定します。
ここで大切なのは、いきなり高すぎる理想を掲げるのではなく、現実的な数値を設定することです。
業界の一般的なベンチマークは参考になりますが、まずは自社の現状を把握することから始めましょう。
もし過去のデータがなければ、最初の1ヶ月は数値を計測するだけに集中し、その結果をベースライン(基準値)として目標を設定するのがおすすめです。
例えば、最初の1ヶ月の初回解決率が60%だったなら、次の目標は「まずは70%を目指そう」というように、達成可能な小さなステップを積み重ねていくことが、チームのモチベーションを維持するコツです。
ステップ3:計測方法とツールを決める
目標が決まったら、それを「どうやって測るか」を決めなければなりません。
立ち上げ期に高価な専用ツールは必ずしも必要ありません。
まずは、GoogleスプレッドシートやExcelのような表計算ソフトで十分です。
大切なのは、計測のルールを明確にすることです。
- いつ:毎日、業務終了時に記録する
- 誰が:各オペレーターが自分で入力し、リーダーが確認する
- どのように:問い合わせ管理番号と紐づけて、各KPIの数値を記録する
このようにルールを決め、チーム全員で共有することで、正確で継続的なデータ計測が可能になります。
ステップ4:チームに目標を共有し、役割を明確にする
目標と計測方法が決まったら、それをチームメンバー全員に丁寧に共有しましょう。
ただ「この数値を達成してください」と伝えるだけでは不十分です。
なぜこの3つのKPIを追うのか、それが会社の目標やお客様の満足にどう繋がっているのか、その背景にあるストーリーをしっかりと語ることが重要です。
目標が「自分ごと」になったとき、メンバーは主体的に動き始めます。
「初回解決率を上げるために、よくある質問のマニュアルを充実させよう」「平均応答時間を短縮するために、テンプレート返信を見直そう」といった改善アイデアが、現場から自然と生まれてくるようになります。
ステップ5:定期的な振り返りの場を設ける
最後のステップは、KPIを「設定しっぱなし」にしないための仕組み作りです。
定期的にチームで集まり、目標の達成状況を振り返る場を設けましょう。
おすすめは、以下のようなサイクルです。
- 日次:朝会で前日の数値を確認(5分程度)
- 週次:週末に1週間の傾向を分析し、改善点を話し合う(30分程度)
- 月次:月末に1ヶ月の成果をまとめ、上司に報告。来月の目標を再設定する(1時間程度)
この振り返りの場で大切なのは、できなかったことを責めるのではなく、「どうすればもっと良くなるか」を全員で考えるポジティブな雰囲気を作ることです。
この改善サイクルを回し続けることが、チームを継続的に成長させるエンジンになります。
カスタマーサポートの評価基準とチーム成長後の追加KPI例
ご紹介した3つの基本KPIの運用が安定し、チームが成長してきたら、次のステップに進む準備ができたサインです。
ここでは、より多角的にチームのパフォーマンスを評価し、さらなる成長を目指すための追加KPIの例をいくつかご紹介します。
これらは、より詳細なカスタマーサポートの評価基準としても役立ちます。
顧客ロイヤルティを測る:NPS®(ネット・プロモーター・スコア)
NPS®は、「この企業(サービス)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問を通じて、顧客ロイヤルティ(企業やブランドへの愛着・信頼)を測る指標です。
CSATが「個別の対応」への満足度を測るのに対し、NPS®は「企業全体」への評価を測るという違いがあります。
NPS®が高い顧客は、解約しにくく、他の顧客を紹介してくれる可能性も高いため、長期的な事業成長と強い相関があると言われています。
オペレーターの生産性を測る:平均処理時間(AHT)
平均処理時間(Average Handle Time)は、1つの問い合わせ対応にかかる時間の平均値です。
これには、顧客との通話時間だけでなく、後処理(履歴の入力など)の時間も含まれます。
AHTを計測することで、チーム全体の生産性を可視化できます。
ただし、注意点があります。
AHTの短縮だけを追い求めると、対応が雑になり、顧客満足度や初回解決率が低下する恐れがあります。
必ず他の品質指標とセットで見るようにしましょう。
コスト効率を測る:コンタクト率
コンタクト率とは、顧客数に対して、どれくらいの割合で問い合わせが発生したかを示す指標です。
この数値が高い場合、製品やサービスが分かりにくい、あるいはFAQなどの自己解決ツールが不足している可能性があります。
コンタクト率を下げる努力は、問い合わせ対応のコストを削減することに直結します。
FAQページを充実させたり、分かりやすいチュートリアル動画を用意したりすることで、顧客が自己解決できる環境を整える「プロアクティブサポート」の考え方は、これからのカスタマーサポートに不可欠な視点です。
まとめ:まずは3つのKPIから自信を持って始めよう
今回は、カスタマーサポート部門の立ち上げ期に焦点を当て、KPIの選定から目標設定の具体的なステップまでを解説しました。
カスタマーサポートのKPI設定で最も大切なことは、多くの指標を並べることではありません。
自社のフェーズに合った本当に重要な指標に絞り込み、それをチーム全員で共有し、継続的に改善のサイクルを回していくことです。
情報が多すぎて何から手をつけていいか分からなくなっていた方も、まずはこの記事でご紹介した3つのKPIから始めてみてください。
- 品質を測る「初回解決率(FCR)」
- 顧客満足度を測る「顧客満足度スコア(CSAT)」
- 効率を測る「平均応答時間(ART)」
この3つをしっかりと計測し、改善していくことが、顧客に愛され、会社に貢献できる強いカスタマーサポートチームを作るための、最も確実で力強い第一歩となります。
大丈夫、あなたならできます。
自信を持って、チームと一緒に新しい航海へ出発しましょう。
