2025.05.02
3つのカスタマーサクセス提供フェーズと違いについて解説
CSブログ
カスタマーサクセスには3つの提供フェーズがあり、それぞれ明確に役割があります。
- 【導入期】オンボーディングフェーズ
- 【定着期】アダプションフェーズ
- 【利用拡大期】エクスパンションフェーズ
顧客の成功体験を最大化し、LTV(顧客生涯価値)向上を実現するためには、顧客の状況に応じた適切なアプローチが不可欠です。その羅針盤となるのが、カスタマーサクセスにおける提供フェーズの考え方です。
本記事では、カスタマーサクセスの主要なフェーズとその役割、各フェーズで成功するための具体的なポイントを、明日から現場で使える実践的な視点も交えながら解説します。
カスタマーサクセスをフェーズ分けすべき理由
そもそも、なぜカスタマーサクセス活動を「フェーズ」という段階に分けて考える必要があるのでしょうか? それは、顧客が製品・サービスを導入してから価値を感じ、長期的に利用し続けるまでの道のり(カスタマージャーニー)は一直線ではなく、段階ごとに大きく異なるからです。
これに対して、カスタマーサクセスの取り組みを段階に分けて提供することで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 顧客の「現在地」が見える化され、チーム内で一貫した対応が可能になる
- 各フェーズの目標とアクションが明確になり、再現性の高いCS活動が実現する
- 解約の予兆を早期に捉え、プロアクティブな対応が可能になる
- データに基づいた判断と施策評価が可能になり、CS活動の成果を可視化できる
- 部門間連携が促進され、全社で顧客成功を支援する体制が構築される
つまり、カスタマーサクセスをフェーズ分けすることは、顧客にとっても企業にとっても、より良い成果を着実に生み出すための仕組みとも言えます。「顧客の現在地」を正しく理解し、効果的かつ効率的な支援を行うために、フェーズという考え方は不可欠な要素です。
カスタマーサクセスにおける3つの提供フェーズと役割

それでは、具体的にどのようなフェーズに分けてカスタマーサクセスの取り組みをすべきなのか説明します。
- オンボーディングフェーズ(導入期)
- アダプションフェーズ(活用促進/定借期)
- エクスパンションフェーズ(拡大期)
1. オンボーディングフェーズ(導入期)
オンボーディングフェーズは、顧客が製品やサービスの利用を開始する初期段階です。
オンボーディングの目的は、顧客がスムーズに利用を開始し、早期に製品・サービスの基本的な価値を体験できるよう支援することです。具体的には、アカウント設定、初期設定のサポート、基本的な操作方法のトレーニング、導入目的の再確認などを行います。
オンボーディングの質は、顧客の第一印象を決定づけ、その後の定着率(リテンションレート)に大きく影響します。ここでつまずくと、早期解約のリスクが高まるため、非常に重要なフェーズと言えます。
成功のポイントは、顧客が抱える導入時の不安を取り除き、「これなら使えそうだ」と感じてもらうことです。丁寧な導入支援や分かりやすいマニュアル提供、必要に応じた伴走支援などが有効です。
2. アダプションフェーズ(活用促進/定着期)
アダプションフェーズは、顧客が製品やサービスを本格的に活用し、業務プロセスに組み込んでいく段階です。
アダプションの目的は、顧客が製品・サービスの価値を最大限に引き出し、なくてはならないツールとして定着させることです。オンボーディングで基本的な使い方を覚えた顧客に対し、より高度な機能の紹介、活用事例の共有、利用状況のモニタリングと改善提案などを行います。
このフェーズでは、顧客が「単に使う」だけでなく、「成果を出すために活用する」状態を目指します。利用状況データを分析し、活用が進んでいない顧客には積極的に働きかける「テックタッチ」や「ロータッチ」、あるいは個別のコンサルティングを行う「ハイタッチ」など、顧客セグメントに応じたアプローチが求められます。
顧客が製品価値を実感し、活用が習慣化すれば、満足度は向上し、解約率は低下します。継続的なフォローアップと、成功体験の積み重ねが鍵となります。
3. エクスパンションフェーズ(拡大期)
エクスパンションフェーズは、顧客が製品・サービスに満足し、さらなる価値向上を求めている段階です。
エクスパンションの目的は、アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連製品・サービスの追加導入)を通じて、顧客単価(ARPA)を高め、LTVを最大化することです。顧客のビジネス課題やニーズを深く理解し、それを解決するための最適な提案を行います。
重要なのは、単なる「売り込み」ではなく、顧客の成功をさらに後押しするための提案であるという点です。アダプションフェーズで築いた信頼関係と、顧客の利用データやビジネス状況の分析に基づき、適切なタイミングで提案することが成功のカギとなります。
顧客のビジネス成長に貢献することで、Win-Winの関係を築き、より強固なパートナーシップへと発展させることができます。
フェーズ定義は”完璧”である必要はない
ここまで各フェーズを解説しましたが、「自社に当てはめると、どこからどこまでがどのフェーズか明確に分けられない…」と感じる方もいるかもしれません。特に、顧客によって利用状況や成熟度が大きく異なる場合、厳密なフェーズ分けは困難です。
ここで重要なのは、最初から完璧なフェーズ定義を目指す必要はないということです。まずは、顧客の典型的なジャーニー(導入→活用→定着→拡大/更新)を大まかに捉え、それぞれの段階で「顧客がどのような状態にあるか」「CSMとして何をすべきか」の仮説を立てることから始めましょう。
フェーズ分けされたカスタマーサクセスの取り組みを成功させるポイント
カスタマーサクセスの各フェーズを定義するだけでは不十分です。それぞれのフェーズで顧客の成功を確実に支援し成果に繋げるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
ここでは、フェーズ横断的に意識すべき成功のポイントを解説します。
1. 各フェーズにおける「成功状態」の定義を明確にし、共通認識とする
まずは各フェーズで顧客がどのような状態になることを「成功」とするのか?を明確に定義することが重要です。
顧客は様々な課題をもってサービスを利用します。それらの課題に対して、いつ・なにを・誰が・どのように実行/支援するのか?その結果どうなると成功と言えるのか?そういった部分を事前に仮説立て、運用すると良いでしょう。
そのためにも、顧客の課題・ニーズを正しく把握することも必要です。CSMによるヒアリングはもちろん、サービスの利用状況や顧客アンケートなどを通して、情報収集に努めましょう。
2. 成果に繋がる具体的なアクションプランを組み立て、実行し、仕組み化する
各フェーズの目標達成に向けては、「何を」「どのように」実行するのかを具体的に定めたアクションプラン(プレイブック)が有効です。
例えば、「オンボーディング完了率〇%向上」という目標に対し、「契約後3営業日以内にキックオフミーティング実施」「1週間後に初期設定完了を確認」「活用セミナーへの誘導」といった具体的なアクションを定めます。
アクションプランには、担当者、実施タイミング、利用するツール、確認すべき指標などを明記し、チーム内の誰が担当しても一定の品質で実行できるよう標準化することが重要です。これにより、属人化を防ぎ、CS活動の再現性を高めることができます。
成功したアクションプランはチーム内で共有し、ベストプラクティスとして蓄積していくことで、組織全体のCSレベル向上に繋がります。
「現場の知恵」を仕組み化する
アクションプラン(プレイブック)を作成する際、つい理想的な手順や高度な施策を盛り込みたくなりますが、現場のリソースやスキルレベルを無視した計画は形骸化してしまいます。
そこでお勧めしたいのが、「今、現場でうまくいっていること」「成果を出している担当者の工夫」を起点にアクションプランを考えることです。トップパフォーマーの行動や、顧客から「助かった」と言われた対応などをヒアリングし、その「暗黙知」を「形式知」としていくことから着手しましょう。
カスタマーサクセスの3つの提供フェーズまとめ
本記事では、カスタマーサクセスにおける主要なフェーズ(オンボーディング、アダプション、エクスパンション)とその役割、そして各フェーズで成功するためのポイントについて解説しました。
カスタマーサクセスをフェーズで分けることの核心は、顧客の状況を的確に把握し、適切なタイミングで、適切な支援を提供するための「共通言語」と「行動指針」を持つことにあります。これにより、以下のような効果が期待できます。
- 顧客の「現在地」が見える化され、チーム内で一貫した対応が可能になる
- 各フェーズの目標とアクションが明確になり、再現性の高いCS活動が実現する
- 解約の予兆を早期に捉え、プロアクティブな対応が可能になる
- データに基づいた判断と施策評価が可能になり、CS活動の成果を可視化できる
- 部門間連携が促進され、全社で顧客成功を支援する体制が構築される
もしあなたが今、「顧客へのアプローチが場当たり的になっている」「チーム内でCSの進め方が統一されていない」といった課題を感じているなら、まずは自社の顧客体験をフェーズに分解し、それぞれの段階で何をすべきかを整理することから始めてみてください。
最初から完璧なものを目指す必要はありません。この記事を参考に、まずは「たたき台」となるフェーズ定義とアクションプランを作成し、チームで議論しながら改善していくことが、顧客と共に成長するための重要な一歩となるはずです。