2025.03.31
カスタマーサクセスのアダプションとは?オンボーディングとの違い・抑えるべきポイントを紹介
CSブログ
カスタマーサクセスにおいて、アダプションは顧客の成功に不可欠です。
アダプションとは、サービス導入後のオンボーディングが完了した顧客に対して行うサービス利用定着・活用促進の取り組みを指します。
オンボーディングとアダプションは目的が異なります。サービス利用開始のつまずき解消・初期設定を進めるオンボーディングに対して、アダプションは顧客が利用価値を実感できるようサービスの利用定着・より導入目的に応じた活用促進の支援を行います。
アダプションは重要な理由としては、下記3つの理由があります。
- サービスの価値実感までの時間短縮
- タイムトゥーバリュー(Time to Value)の向上
- 上位プランへの利用拡大
アダプションの効果を最大化するためにも、導入目的の理解と時間軸を整理した上でまずは効果を実感しやすい施策から着手していきます。合わせて活用状況のデータ利用や、顧客の組織体制を把握することがポイントです。
本記事では、アダプションとは何か、その重要性と効果的に行うポイントを説明します。

カスタマーサクセスにおけるアダプションとは?
カスタマーサクセスにおけるアダプションとは、サービスを契約した顧客に対し、オンボーディング完了後に行う活用促進・利用定着の支援のことを指します。
顧客の成功を目指すためにも、サービスの継続率の改善をするためにも、カスタマーサクセスにおけるアダプションは重要な取り組みです。
アダプションは3つのカスタマーサクセス業務の1つに該当する
カスタマーサクセス業務には「導入期」から「利用拡大期」まで大きく3つのフェーズがあり、アダプションはちょうど中間のフェーズにあたります。
- 【導入期】オンボーディング:顧客がサービスを正しく設定し、基本的な利用方法を習得するフェーズ。
- 【定着期】アダプション:サービスの活用促進を行い、利用の定着・運用をスムーズにするフェーズ。
- 【利用拡大期】エクスパンション:顧客がサービスの活用を通じて、より広範囲な課題解決や新たな目標達成に取り組み、さらなる価値を得るフェーズ。
アダプションはサービス利用開始後、顧客のサービス活用&定着を促進し、サービスの価値を早期に実感していただくことを目的に実施します。
したがって結果指標としては、顧客ごとのタイムトゥーバリューや利用継続率を見ていくことが多いです。
オンボーディングとアダプションの違い
オンボーディングとアダプションは、実施する目的に違いがあります。
- オンボーディングの目的:顧客がサービスを利用開始できる状態を作ること
- アダプションの目的:顧客のサービス活用&定着を促進し、サービスの価値を早期に実感していただくこと
オンボーディングフェーズでは、サービス利用開始にあたってのチュートリアルや、躓きやすいポイントのフォローを行います。
一方でアダプションフェーズでは、サービス導入の目的(顧客が解決したい課題)に対して、その解決に動いていきます。
支援の目的とゴールを明確に定義することが重要
アダプションに限らず、カスタマーサクセス業務においては「実施の目的」と「ゴール」を明確に定義し・設計することが重要です。
特にオンボーディングとアダプションは、取り組みの目的や内容が混ざってしまうことがあります。多くの場合、支援の明確なゴール設定をしないまま推進していまうことが原因です。
アダプションの内容は提供サービスによって大きく異なる
アダプションの内容は、顧客に提供するサービスの特性によって大きく異なります。
例えばバックオフィス向けSaaSのような「業務プロセスそのものの提供」が価値となるサービスの場合は、顧客がツールを使いこなし、定常業務を着実に・ミスなく実施することが命題です。そのためアダプションの目的は「顧客に合った機能の活用方法」あるいは「業務フローの提案」が中心になるでしょう。
一方で営業/マーケティング管理が目的のSaaSのような「売上の最大化」が価値となるサービスの場合だと、機能の利用方法に加えて「目標達成のためのコンサルティング」に近い内容がアダプションの目的となります。
顧客に寄り添い、顧客の成功に向けて一緒に取り組めるアダプションは、どのような支援をおこなべきか悩むことも多いと思います。最も自社のカスタマーサクセスとして腕の見せ所です。

カスタマーサクセスにアダプションが重要な理由
オンボーディングとアダプションは目的が異なり、アダプションではサービスの利用定着を目指し、顧客の成功に向けた活用支援を行うことが重要です。
BtoB向けSaaSの場合は、契約更新時期も近いフェーズになりますので初年度で目指す状態まで導けていない場合は継続率に影響する可能性があります。
この章では、アダプションに取り組む重要性を3つ説明します。課題感が強いものが1つでもある場合はすぐにアダプションの改善を進めましょう。
- サービスの利用価値を実感するスピードが早まる
- 継続利用につながる
- 上位プランの利用拡大にもつながる
1. サービスの利用価値を実感するスピードが早まる
アダプションに取り組むことで、顧客がサービスの利用価値を実感するまでの期間が短くなり、顧客の成功へ導くことができます。
タイムトゥバリュー(Time to Value / TTV)という言葉があります。タイムトゥーバリューとは、顧客がサービスを通して、価値を感じるまでの時間のことです。特にBtoB向けSaaSでは、このTTVを短縮することが顧客満足度や継続率の向上に繋がります。
TTVの短縮には導入直後のオンボーディングを行うだけではなく、アダプションで顧客がサービスを活用し続けられる状態を作ることが重要です。利用定着・活用促進が進むことで顧客はサービス価値を実感し、継続利用に繋がります。
特に契約更新があるサービスの場合は、初年度中に価値を少しでも感じてもらえるためにアダプションを強化することで継続率の改善が期待できます。
2. 継続利用につながる
TTVが短ければ、顧客はこのサービスを継続して利用すべきか判断するのが容易になります。導入時に想定していた価値実感ができると、より深い価値を提供することもできるので、サービスの継続利用を判断しやすくなり、今後の利用拡大にも繋がります。
逆に価値実感までの時間が長すぎると、「なぜこのサービスを導入したのか?」と導入目的が果たせないと判断され、早期解約の可能性が高くなります。
3. 上位プランの利用拡大にもつながる
アダプションが進んでいくと、顧客はサービス利用に価値実感を持ち始めるため、長期継続が見込めます。顧客の成功に近づくほど、事業の拡大や他部署で同様の課題解決などで利用規模が広がります。その結果、上位プランへのアップグレード、複数アカウントでの利用(クロスセル)などに繋がります。
この利用拡大期をエクスパンションと呼びますが、アダプションで活用促進を進め、顧客の成功に合わせた活用提案を行うことでエクスパンションへつなげることが出来ます。
逆に、エクスパンションへつなげるには、サービスが利用開始・利用定着ができていることが大前提となります。オンボーディング・アダプションが出来ていない場合は無理に提案することで顧客と足並みが揃わなくなってしまいます。
アダプションを効果的に行うためのポイント
アダプションを行うことで、TTVが短縮され、継続率が改善されることを説明しました。
しかし、アダプションで行うべき支援内容は提供するサービスによって異なりますので、具体的な施策をただ参考にするだけでは成功しません。何を押さえてアダプションを行うべきか説明します。
1. 導入目的の理解と時間軸の整理
アダプションは利用定着・活用促進を通して価値を実感してもらうことが重要です。そのためには、まず顧客の導入目的を適切に理解し、いつまでにどの状態を目指すのか認識を揃えることが重要です。
基本的には、顧客が目指す期間より早く成功体験を積み重ね、価値実感へつなげるためにカスタマーサクセスを行う意識を持ちましょう。万が一想定よりも価値実感が遅くなる場合は、解約や別サービスへの乗り換えを検討される可能性があります。
顧客ごとの成功状態までの取り組みを考えるには、カスタマージャーニーマップの作成が有効です。
- 導入前にどんな課題を持ってサービスを比較検討するのか
- 導入後はどんな心理でサービス利用を始めるのか
- どのタイミングでネガティブになりやすい・つまづきやすいのか
- 何のハードルを乗り越えることで、小さな成功体験を積み重ね、価値実感へつながるのか
上記のようなことを整理するのがおすすめです。
顧客のフェーズに合わせて、心情・行動・提供できる支援内容を並べてみると、顧客の活用について新たな発見があるだけではなく、今不足している支援も明らかにできます。
カスタマージャーニーの作成方法や、整理について気になる場合はこちらの資料もご覧ください。
複数の価値実感がある場合はアウトカムマップの作成につなげる
カスタマージャーニーを作ると、顧客セグメントによって求める価値実感が異なること、求める価値実感によってカスタマージャーニーが分かれることも見えてきます。
その場合はカスタマージャーニーマップに合わせて、そもそもどの顧客群がどんな価値実感(アウトカム)を目指すべきか、アウトカムマップと言われるものを作成するのもおすすめです。
2. 効果を実感しやすいもの・指標で表せるものから取り組む
導入目的と時間軸を整理できたら、次は実際にアダプションの支援に取り組みます。その場合、まずは価値を実感しやすいものから取り組むように進めるのがおすすめです。
サービスによっては、顧客が価値実感する要素が複数あります。BtoB向けのサービスであれば、売上の拡大もしくは工数削減による効率化どちらかにヒットすることが多いでしょう。その場合は、すぐに効果が見込める要素からまず取り組みましょう。
利用定着にも、効果が少しずつ出ていることが分かる状態、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。何ヶ月もどんな成果が出るのかわからない中サービスを利用し続けることはむずかしいため、数字や体験でわかりやすく効果があるものから支援しましょう。
例えば、BtoB向けSaaSのようなツールの場合、下記のような効果の出る活用方法を提供できます。
- 売上拡大:売上までの指標を整理し、1つの指標改善できる施策に集中して成功を目指す
- 工数削減による効率化:手作業で時間や手間がかかる業務を半減もしくは完全に自動化する
3. 顧客の活用状況のデータ化
アダプションが順調に進んでいるかどうかは必ず確認すべきです。ハイタッチで取り組める場合は顧客にヒアリングすることも重要になります。
そのヒアリング情報をデータ化し、時系列で確認できるようにしましょう。
また、顧客にヒアリングをすることも重要ですが、BtoB向けSaaSのようにサービスの活用状況をシステムでデータ化できる場合は、データを一覧化して、成功している顧客と成功する前の顧客でどのデータが異なるのか違いを確認することで、支援内容を見直す事ができます。
顧客の成功までにどの機能の活用を伸ばすべきなのか、どの順で利用定着を進めるべきかを組み立てるためにも、データに基づいて仮説を立てることがTTVの短縮にも繋がります。
データで利用状況が可視化できるようになると、ハイタッチだけではなくロータッチやテックタッチで同じような支援ができないか?と適切な支援方法を検討することができます。
4. 顧客の組織体制の確認・変更を把握
提供するサービスによっては、導入時と実際に運用する時で顧客側の担当者が異なることがあると思います。
例えば勤怠管理ツールの場合、導入時は情報システム部門とのやり取りになるかもしれませんが、実際の運用は人事部や経理部と行うかもしれません。その場合、いつのタイミングから部門が変わるのか、どの担当者がキーマンなのか把握することで、サービスの価値実感がブレずに支援することが出来ます。
特にアダプションはオンボーディング後ということもあり、組織体制・担当者変更が少なくありません。顧客の組織体制を把握し、契約更新時に導入目的の達成状況を判断する人はどの担当者なのか、キーマンを押さえておくことでアダプションの効果を最大化できます。
また、企業によっては組織体制の変更スピードが早い場合もあるため、変更があった場合はスピーディに把握し、再度サービスに関する説明や当初の導入目的の共有、新任の担当者との関係の再構築が必要になります。
カスタマーサクセスにおけるアダプションまとめ
カスタマーサクセスにおいて、アダプション重要な理由と成功するためのポイントを説明しました。
アダプションとは、オンボーディング完了した顧客に対して利用定着・活用促進の支援をすることです。これにより、以下のような成果が期待できます。
- サービスの価値実感までの時間短縮
- タイムトゥーバリュー(Time to Value)の向上
- 上位プランへの利用拡大
アダプションを効果的に進めるには、カスタマージャーニーマップを活用し、顧客の導入目的を正しく理解することが大切です。その後、効果を実感しやすい施策から取り組み、活用データの可視化を進めましょう。もし顧客の組織体制が変更された場合はスピーディに把握することも書かせません。
アダプションを強化し、顧客の成功を支援していきましょう。
