2025.07.04
カスタマーサクセス組織のKPIを設定するには?失敗しない方法を3つの観点から解説
CSブログ
- カスタマーサクセスの目的は「顧客の成功」の実現を通じたLTVの最大化である。
- KPIは、目標の可視化、効果測定、客観的な評価のために不可欠なツールである。
- 主要なKPIは「収益性」「利用状況」「満足度」の3つのカテゴリで整理できる。
- KPI設定は「KGI→KSF→KPI→アクションプラン」の順でトップダウンに行う。
- KPIは、解約防止やアップセルを通じて、カスタマーサクセスの売上貢献を定量的に示す武器になる。
- 設定したKPIは定期的にモニタリングし、評価と改善のサイクルを回すことが重要。
カスタマーサクセスのKPI設定は、一度で完璧なものができるわけではありません。大切なのは、まずこの記事で紹介したフレームワークを参考に、自社なりのKPIを設定し、運用を始めてみることです。
KPIという羅針盤を手に、チームで議論し、改善を繰り返していく中で、あなたのチームは「顧客の成功」と「事業の成長」を両立させる、真に価値ある存在へと進化していくはずです。まずは、あなたのチームのKGIが何かを確認するところから始めてみましょう。
「カスタマーサクセス部門を立ち上げたものの、どんな数値を目標にすれば良いかわからない…」
「活動の成果を上司に報告したいけど、売上への貢献をどう定量的に示せばいいんだろう?」
「チームメンバーの評価基準を作りたいけど、適切な指標って何だろう?」
こうした疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。カスタマーサクセスは、企業の持続的な成長に不可欠な役割を担いますが、その活動の価値を客観的な「数字」で示すことは簡単ではありません。
この記事では、そんなお悩みを持つあなたのために、カスタマーサクセスにおけるKPI(重要業績評価指標)の選定から目標設定、評価、改善までの一連のプロセスを網羅的に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは以下の状態になっています。
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- 自社の状況に合った最適なKPIが何かがわかる
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- 具体的で納得感のある目標設定の手順がわかる
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- カスタマーサクセス活動の成果を定量的に評価し、社内に説明できるようになる
単なるKPIリストの紹介に留まらず、あなたのチームが「顧客の成功」を通じて事業成長に貢献するための「羅針盤」となる知識を提供します。ぜひ最後までお付き合いください。
カスタマーサクセスとは?KPI設定の前提知識
KPIの話に入る前に、まずは「カスタマーサクセス」の役割と、よく混同される「カスタマーサポート」との違いを明確にしておきましょう。この前提を理解することが、適切なKPI設定の第一歩です。
カスタマーサクセスの目的は「顧客の成功」
カスタマーサクセスの最大の目的は、顧客が自社の製品・サービスを通じて「成功体験」を得られるように、能動的に働きかけることです。顧客が成功すれば、製品を継続的に利用してくれるだけでなく、より上位のプランへのアップグレード(アップセル)や、関連製品の追加購入(クロスセル)にも繋がります。
結果として、顧客一人ひとりから得られる生涯価値(LTV:Life Time Value)が最大化され、企業の安定的な収益基盤が築かれます。つまり、カスタマーサクセスは「守り」の活動だけでなく、事業成長に直接貢献する「攻め」の役割も担う、極めて戦略的な部門なのです。
カスタマーサポートとの違い
一方、カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせやクレームに対して「受動的」に対応し、問題を解決することが主な役割です。両者の違いをまとめると以下のようになります。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
---|---|---|
目的 | 顧客の成功、LTVの最大化 | 問題解決、顧客満足度の維持 |
姿勢 | 能動的・戦略的 | 受動的・対応的 |
役割 | 未来の解約防止、収益拡大 | 現在の問題解決 |
評価指標(例) | 解約率、NRR、ヘルススコア | 解決率、応答時間、CSAT |
このように、カスタマーサクセスは未来の収益を生み出すための投資活動であり、その成果を正しく測るためにKPIの設定が不可欠となります。
なぜKPIが重要なのか?カスタマーサクセスにおける3つの役割
「なんとなく活動はしているけれど、KPIは特に設定していない」というケースもあるかもしれません。しかし、KPIを設定しないカスタマーサクセス活動は、目的地のわからない航海のようなものです。ここでは、KPIがなぜ重要なのか、その具体的な役割を3つの視点から解説します。
1. チームの目標を可視化し、進捗を管理する
KPIは、チーム全員が目指すべきゴールを具体的な数値で示してくれます。「顧客の成功を支援する」という抽象的な目標だけでは、メンバーは何をどのくらい頑張れば良いのかわかりません。
例えば、「今期の解約率を1%未満に抑える」「オンボーディング完了率を95%まで引き上げる」といった具体的なKPIを設定することで、チームの向かうべき方向が明確になり、日々の活動の優先順位もつけやすくなります。また、定期的に進捗を確認することで、目標達成に向けた軌道修正も可能になります。
2. 施策の効果を客観的に測定し、改善する
カスタマーサクセスでは、オンボーディングの改善、勉強会の開催、活用事例の共有など、様々な施策を行います。しかし、これらの施策が本当に効果があったのかを「感覚」で判断するのは危険です。
KPIがあれば、「新しいオンボーディングプログラムを導入したら、ヘルススコアが平均10ポイント上昇した」というように、施策の効果を定量的に測定できます。データに基づいて効果を検証し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことで、カスタマーサクセス活動全体の質を高めていくことができます。
3. 活動の価値を証明し、公平な評価基準を設ける
カスタマーサクセスは、時に「コストセンター」と見なされがちです。KPIは、その活動が企業の売上や利益にどれだけ貢献しているかを客観的なデータで示すための強力な武器になります。「解約率の低下によって、年間〇〇円の逸失利益を防いだ」「アップセルによって、売上を〇〇円増加させた」といった具体的な成果を提示することで、経営層や他部門からの理解と協力を得やすくなります。
また、個人のパフォーマンスを評価する際にも、KPIは公平な評価基準として機能します。担当顧客のチャーンレートやアップセル率などを評価指標に組み込むことで、メンバーの貢献度を正しく評価し、モチベーション向上に繋げることができます。
コラム:KPIはチームを導く「羅針盤」
KPIは、単なる管理ツールではありません。それは、チーム全体が向かうべき方向を示し、現在地を確認し、目的地までの進み方を教えてくれる「羅針盤」です。
羅針盤がなければ、チームは日々の業務の荒波にただ流されてしまいます。しかし、全員が共有する明確なKPIがあれば、「自分たちの活動が、この指標を動かすためにあるんだ」という共通認識が生まれます。この共通認識こそが、チームの一体感を醸成し、困難な状況でもぶれない軸となるのです。
【目的別】カスタマーサクセスの主要KPI・指標一覧
それでは、具体的にどのようなKPIがあるのでしょうか。ここでは、カスタマーサクセスでよく使われる主要なKPIを「目的」別に3つのカテゴリに分けて解説します。自社の事業フェーズや課題に合わせて、どの指標を重視すべきか考えてみましょう。
1. 顧客の定着と収益性を測る指標
このカテゴリの指標は、カスタマーサクセス活動が直接的に企業の収益にどう貢献しているかを示すもので、経営層への報告にも非常に重要です。
解約率(チャーンレート)
一定期間内にどれくらいの顧客や収益が失われたかを示す、カスタマーサクセスにおいて最も重要な指標の一つです。チャーンレートには、顧客数をベースにした「カスタマーチャーンレート」と、収益額をベースにした「レベニューチャーンレート」があります。
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- カスタマーチャーンレート (%) = (期間内の解約顧客数 ÷ 期間開始時の総顧客数) × 100
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- レベニューチャーンレート (%) = (期間内に失ったMRR ÷ 期間開始時のMRR) × 100
売上継続率(NRR:Net Revenue Retention)
既存顧客からの収益が、前年同月比でどれだけ増減したかを示す指標です。解約による収益減(チャーン)と、アップセル・クロスセルによる収益増(エクスパンション)を合算して計算します。NRRが100%を超えている場合、新規顧客を獲得しなくても事業が成長していることを意味し、「健全なSaaSビジネス」の証とされます。
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- NRR (%) = ((期間開始時のMRR + 期間内のExpansion MRR – 期間内のDowngrade MRR – 期間内のChurn MRR) ÷ 期間開始時のMRR) × 100
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)
一人の顧客が、取引を開始してから終了するまでの全期間で、自社にもたらす利益の総額です。LTVを最大化することがカスタマーサクセスの最終目標とも言えます。LTVを顧客獲得コスト(CAC)と比較することで、事業の収益性を判断できます。
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- LTV = 平均顧客単価(ARPA) ÷ レベニューチャーンレート
アップセル/クロスセル率
既存顧客に対して、より高価なプランや関連サービスを販売できた割合や金額です。これはカスタマーサクセスが「コストセンター」ではなく、「プロフィットセンター」として売上に貢献していることを示す直接的な指標です。
2. サービスの利用状況・エンゲージメントを測る指標
顧客がサービスをどれだけ活用してくれているか、そのエンゲージメント度合いを測る指標です。これらの指標は、解約の予兆を早期に発見するために重要です。
ヘルススコア
顧客が将来的にサービスを継続利用してくれるかどうかを「健康状態」としてスコア化した独自の指標です。ログイン頻度、特定機能の利用率、サポートへの問い合わせ回数など、複数の指標を組み合わせて算出します。ヘルススコアが低い顧客は解約リスクが高いと判断し、プロアクティブなフォローアップを行います。
オンボーディング完了率
新規顧客が、サービスの初期設定や基本的な操作方法を習得する「オンボーディング」プロセスを完了した割合です。オンボーディングの成功は、その後のサービス定着率に大きく影響するため、非常に重要な先行指標となります。
アクティブユーザー数(DAU/WAU/MAU)
それぞれ、1日あたり(Daily)、1週間あたり(Weekly)、1ヶ月あたり(Monthly)のサービス利用ユーザー数です。サービスの性質に合わせて適切な期間で計測し、顧客の利用が活発かどうかを判断します。
3. 顧客満足度・ロイヤルティを測る指標
顧客が自社の製品や企業に対して、どれだけ満足し、愛着を持ってくれているかを測る指標です。定量的なアンケート調査によって測定します。
NPS®(Net Promoter Score)
「この製品(サービス)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対し、0〜10の11段階で評価してもらう顧客ロイヤルティ指標です。単なる満足度ではなく、再購入や他者への推奨といった「収益に繋がる行動」との相関性が高いとされています。回答者を「推奨者」「中立者」「批判者」に分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出します。
CSAT(Customer Satisfaction Score)
「この対応にご満足いただけましたか?」といった質問で、特定の接点(例:サポート対応後、セミナー参加後など)に対する顧客満足度を測る指標です。短期的な満足度を測るのに適しています。
コラム:「ヘルススコア」は顧客ステータスを映す鏡
数ある指標の中でも「ヘルススコア」は、カスタマーサクセスの真骨頂とも言える指標です。なぜなら、これは「顧客の成功とは何か」を自社で定義し、それを数値に落とし込む作業だからです。
例えば、あるプロジェクト管理ツールにとっての「成功」が「毎週、新しいプロジェクトが1つ以上作成されること」だと定義すれば、それがヘルススコアの重要な要素になります。このように、顧客の現在のステータスを映す鏡としてヘルススコアを設計・運用することで、解約の予兆を捉えるだけでなく、アップセルのチャンスを発見することも可能になります。
失敗しない!カスタマーサクセスのKPI・目標設定 4つのステップ
KPIの種類がわかったところで、次はいよいよ「自社のKPIと目標をどう設定するか」という実践的なステップに進みます。やみくもに指標を選ぶと、活動が的外れになったり、チームが疲弊したりする原因になります。ここでは、失敗しないための具体的な目標設定の手順を4つのステップで解説します。
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- KGI(重要目標達成指標)の確認
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- KSF(重要成功要因)の特定
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- KPI(重要業績評価指標)への落とし込み
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- アクションプランの策定
ステップ1:KGI(重要目標達成指標)の確認
まず最初に、カスタマーサクセス部門が最終的に目指すゴール、すなわちKGI(Key Goal Indicator)を明確にします。KGIは、全社的な経営目標と連動している必要があります。
例えば、会社のKGIが「年間売上〇〇円達成」であれば、カスタマーサクセスのKGIは「LTVの最大化」や「NRR 110%達成」などが考えられます。このKGIが、これから設定するすべてのKPIの拠り所となります。
ステップ2:KSF(重要成功要因)の特定
次に、設定したKGIを達成するためには、何を成功させれば良いのか(Key Success Factor)を洗い出します。これは、KGI達成のための中間目標のようなものです。
例えば、KGIが「NRR 110%達成」の場合、そのためのKSFは「①解約率を低減させる」「②アップセル・クロスセルを増加させる」「③顧客単価を向上させる」といった要素に分解できます。ここで自社の現状の課題を分析し、最もインパクトの大きいKSFは何かを特定することが重要です。
ステップ3:KPI(重要業績評価指標)への落とし込み
特定したKSFの達成度合いを測るために、具体的な数値目標であるKPIを設定します。一つのKSFに対して、複数のKPIが紐づくこともあります。
例えば、KSFが「①解約率を低減させる」であれば、それを測るKPIとして「カスタマーチャーンレートを1%未満にする」「ヘルススコアが赤信号の顧客を月5%減らす」「オンボーディング完了率を95%にする」といった具体的な目標を設定します。このとき、達成可能かつ挑戦的な目標数値を設定することが、チームのモチベーションを維持する上で大切です。
ステップ4:アクションプランの策定
最後に、設定したKPIを達成するための具体的な行動計画(アクションプラン)を立てます。「オンボーディング完了率95%」というKPIを達成するために、「チュートリアル動画を作成する」「週次で進捗確認会を実施する」といった、誰が・いつまでに・何をするのかを明確にします。ここまで落とし込んではじめて、KPIは日々の業務に活かされるようになります。
コラム:「虚栄の指標」に惑わされないために
KPIを設定する際に最も注意すべきことの一つが、「虚栄の指標(Vanity Metrics)」を設定してしまうことです。虚栄の指標とは、数値が伸びると見栄えは良いものの、実際のビジネス成果(KGI)には繋がらない指標のことです。例えば、Webサイトのページビュー数やSNSのフォロワー数などが典型です。
「このKPIが改善したら、なぜKGIが達成に近づくのか?」という問いに明確に答えられない指標は、虚栄の指標である可能性が高いです。必ずKGIから逆算するトップダウンのアプローチでKPIを設定し、チームのリソースを本当に意味のある活動に集中させましょう。
カスタマーサクセスと売上の関係|貢献を定量的に示す方法
「カスタマーサクセスの活動が、どう売上に繋がるのか説明できない…」これは多くの担当者が抱える悩みです。ここでは、KPIを用いてカスタマーサクセスの売上への貢献を定量的に示す方法を解説します。これができれば、あなたは自信を持って活動の価値を社内にアピールできるようになります。
「守り」の貢献:解約防止による逸失利益の抑制
カスタマーサクセスの最も基本的な売上貢献は、解約を防ぐことです。解約率(チャーンレート)の低下は、将来失うはずだった収益を維持することに他なりません。
例えば、月額10万円の顧客が解約するのを防いだとします。これは、何もしなければ失っていたはずの年間120万円の売上を「守った」ことになります。チーム全体のチャーンレート改善が、年間のMRR(月次経常収益)やARR(年次経常収益)にどれだけプラスのインパクトを与えたかを計算し、具体的な金額で示すことが重要です。
「攻め」の貢献:アップセル・クロスセルによる売上拡大
カスタマーサクセスは、守りだけでなく「攻め」の役割も担います。顧客のビジネスを深く理解し、成功を支援する中で、より上位のプランや追加機能が顧客のさらなる成長に繋がると判断すれば、積極的に提案します。
これがアップセルやクロスセルです。カスタマーサクセス部門が起点となって生まれたアップセル・クロスセルの金額や件数をKPIとして設定・計測することで、売上目標への直接的な貢献を可視化できます。これは、カスタマーサクセスがプロフィットセンターであることを証明する最も分かりやすい指標です。
コラム:コストセンターからプロフィットセンターへ
「カスタマーサクセスはコストがかかる部門だ」という見方を覆すには、売上への貢献を数字で示すしかありません。その鍵を握るのが、売上継続率(NRR)です。
NRRが100%を超えるということは、解約で失う売上よりも、既存顧客からのアップセル等で増える売上の方が多い状態を意味します。これは、カスタマーサクセスチームが、受動的に解約を防ぐだけでなく、能動的に売上を創出する「プロフィットセンター」として機能している証拠です。NRRを最重要指標として追いかけることは、チームの意識を変革し、社内での立ち位置を向上させる強力なドライブになります。
KPIを用いたカスタマーサクセス活動の評価と改善
KPIは設定して終わりではありません。定期的にモニタリングし、活動の評価と改善に繋げてこそ意味があります。ここでは、KPIをどのように日々の業務に活かし、チームや個人の評価に結びつけていくのかを解説します。
ダッシュボードでのモニタリングと定例会議
設定したKPIは、いつでも誰でも確認できるように、BIツールやスプレッドシートなどでダッシュボード化しましょう。数値を可視化することで、チーム全体の当事者意識が高まります。
そして、週次や月次で定例会議を開き、KPIの進捗を確認します。この会議の目的は、単に数字を確認することではありません。「なぜこのKPIは目標を達成できたのか?」「なぜこのKPIは未達なのか?」その要因を分析し、次のアクションプランを議論することが重要です。このサイクルを回すことで、チームは継続的に学習し、成長していくことができます。
チームと個人の評価基準への反映
KPIは、チームや個人のパフォーマンスを評価するための客観的な基準となります。評価基準を設けることで、メンバーの貢献を正当に評価し、目標達成へのインセンティブとすることができます。
ただし、注意点もあります。個人の評価がKPIの数字のみに偏りすぎると、「顧客の成功」という本質を忘れ、数字を達成することだけが目的になってしまう危険性があります。例えば、無理なアップセルを勧めてしまい、かえって顧客満足度を下げてしまうといったケースです。
これを防ぐためには、解約率やアップセル率といった定量的な評価(結果指標)と、顧客への貢献姿勢やチーム内での協力といった定性的な評価(プロセス指標)をバランス良く組み合わせることが大切です。評価制度は、チームが健全に機能し、本来の目的を見失わないように慎重に設計しましょう。
カスタマーサクセスのKPIに関するよくある質問
最後に、カスタマーサクセスのKPIに関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q. KPIはいくつくらい設定するのが適切ですか?
A. 一概には言えませんが、チーム全体で追うべき最重要KPIは3〜5個程度に絞り込むことをお勧めします。KPIが多すぎると、どれも中途半半端になり、結局どの指標も改善されないという「形骸化」を招きがちです。まずはKGIに最もインパクトを与える指標にフォーカスし、チームのリソースを集中させましょう。個人の目標としては、そこからブレイクダウンした指標を1〜2個設定するのが一般的です。
Q. チームの立ち上げ期は、どのKPIを優先すべきですか?
A. チームの立ち上げ期(アーリーフェーズ)では、まだ顧客基盤が小さく、チャーンレートなどの数字も安定しないことが多いです。そのため、未来の定着に繋がる「先行指標」を優先するのが良いでしょう。具体的には、以下のKPIが重要になります。
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- オンボーディング完了率:まず顧客が正しく利用を開始できる状態を目指します。
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- ヘルススコアの定義と計測:「自社にとっての顧客の成功とは何か」を定義し、それを測る仕組みを作ることに注力します。
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- NPS®:顧客の生の声を集め、プロダクトやサービスの改善に繋げます。
事業が成長し顧客数が増えるにつれて、チャーンレートやNRRといった収益に直結する指標の重要度が高まっていきます。ビジネスのフェーズに合わせて、KPIは定期的に見直しましょう。
まとめ:KPIを羅針盤に、顧客の成功と事業成長を実現しよう
本記事では、カスタマーサクセスのKPIについて、その重要性から具体的な指標、目標設定の手順、評価・改善の方法までを網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
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- カスタマーサクセスの目的は「顧客の成功」の実現を通じたLTVの最大化である。
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- KPIは、目標の可視化、効果測定、客観的な評価のために不可欠なツールである。
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- 主要なKPIは「収益性」「利用状況」「満足度」の3つのカテゴリで整理できる。
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- KPI設定は「KGI→KSF→KPI→アクションプラン」の順でトップダウンに行う。
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- KPIは、解約防止やアップセルを通じて、カスタマーサクセスの売上貢献を定量的に示す武器になる。
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- 設定したKPIは定期的にモニタリングし、評価と改善のサイクルを回すことが重要。
カスタマーサクセスのKPI設定は、一度で完璧なものができるわけではありません。大切なのは、まずこの記事で紹介したフレームワークを参考に、自社なりのKPIを設定し、運用を始めてみることです。
KPIという羅針盤を手に、チームで議論し、改善を繰り返していく中で、あなたのチームは「顧客の成功」と「事業の成長」を両立させる、真に価値ある存在へと進化していくはずです。まずは、あなたのチームのKGIが何かを確認するところから始めてみましょう。