2023.01.13
過去の経験はすべてCSに通ず。展望はCSの枠をこえ、COOとしてビジネスを動かすこと
インタビュー
長期的な関係構築とサービスの導入・活用支援を通して、顧客の成功に向けて伴走するカスタマーサクセス(以下、CS)。
本シリーズでは「CSのキャリア」をテーマに、CS経験者のリアルなストーリーを紹介していきます。
今回は、Allganize Japan株式会社でCS兼セールスマネージャーとして働く杉本さんに話を伺いました。
目次
大学院中退後コールセンター職へ、理系出身の「数値を見る」強みが活きた1社目
ーー杉本さんは、学生時代に情報工学を専攻とのことですが、営業代行会社へ就職されたきっかけをお聞きしたいです。
大学では情報工学を専攻しており大学院にも進学しました。大学院1年目の時にこの環境で学び続けることに迷いが生じ、退学を決めて就職活動を始めました。そうした中で自身の強みを活かせる仕事って何だろうと考えたときに、理系出身というのも相まって「数値を見る仕事だ」と思ったんですね。
当時はWebマーケティングが盛り上がっていた頃でした。施策の成果をデータで測り、データを元に改善するーーそのサイクルが回せることに魅力を感じ、地元のWebマーケ・デザイン・セールスを全て行っている営業代行会社へ就職を決めました。
ーー中退は勇気のいる決断だったと思いますが、杉本さんの今のキャリアの出発点になっていると感じました。入社後はどのようなお仕事を…?
Webで売る仕組みを全ておこなう会社で、セールスに配属され、2年ほどインサイドセールスの業務を行いました。マーケティング業務に関わりたかったものの、入社1年目は「顧客の声を理解する」方針のもと、毎日受電と架電するという入社前の期待とは少し異なる日々を過ごしていました。(笑)
ただ学生時代はプログラミングを行ったり、数式と向き合ったりする日々だったので、実際に業務をやってみると面白さがありました。セールスの基礎はここで鍛えられましたね。メンバーの電話対応も履歴データが残っていたため、受注率が高い人や失注案件の録音を聞いてトークスクリプトを作ったり…とPDCAを高速で回せることも楽しかったです。業務改善を進め、受注を伸ばした結果、2年目からマネージャーを任されました。
ーー1社目で顧客対応と業務改善の基礎を築かれたのですね。2年間の業務を経て心境の変化はありましたか?
Webマーケに携わりたい気持ちから異動のチャンスを待っていた一方で、このままWebマーケの方向でいいのか?と悩み始めていました。
マーケティング業界の盛り上がりでWebマーケターが一気に増え飽和状態になりつつあると気づき、「自分の市場価値を上げるためにどうすればよいか」と考えた結果、外に目を向け始めました。
ーー早い段階から、ご自身の市場価値を意識されていたのですね。
市場価値と、自分の能力が発揮できそうかどうかを意識していましたね。
1社目の経験を通して「数値やデータに基づいて傾向を見つけて適切なアプローチを行うことで、セールス活動を改善できる」という可能性を感じ、セールスという仕事を突き詰めたい、と思うようになりました。
また、大学院でAI技術や機械学習に触れていたので、いわゆるディープテックと呼ばれる最新技術を扱うビジネスに携わりたいと思い、最終的には「ディープテック」「セールス」の2つを軸に転職活動を進めました。
未経験からのスタートアップで日々奮闘。フィールドセールスで顧客視点を身につける
ーーその後、セールスとしてベンチャー企業へ入社されたとのことですが、これまでと全く違う環境に不安や戸惑いはありませんでしたか?
1日中デスクに座り電話する仕事から、業界知識も訪問営業の経験もないままドローンを扱うスタートアップへ飛び込んだので、もちろん不安はありました。(笑)
当時は産業領域でドローンを活用する動きが活発になったばかりで、特に建設土木工事の現場にドローン測量のニーズがあったため、主な顧客は土木現場で働く方々でした。
セールスポジションとして東京本社に入社するも、人が足りないという理由で九州拠点へ異動になり、セールス活動はもちろん、ドローンの操縦やドローンで取得したデータ分析といった、ドローン測量における全てを担っていました。
入社直後は当初の不安が的中し、幅広い業務にもなかなか慣れず、顧客や上司によく怒られ、体調が悪くなることもありました(笑)
ーーそのような苦しい時期もあったのですね。前職とのギャップが大きかった中で、新たな気づきや学びはありましたか?
会社が創業期で人手不足であったため、まず現場へ足を運ぶことが求められ、土木会社や工事現場に飛び込み営業を行うなど、とにかく案件をとるという泥臭いセールスを行っていました。想像以上に前職の知識や経験は活きませんでした(笑)
一方で、現場での業務から学ぶことは多くあります。
セールスといってもドローン測量を売り込むだけでは買ってもらえません。まずは顧客の現状を把握し、課題を見つけ、的確な提案をすることが重要です。自社が提供するサービスで今の課題をどう解決できるか、という現場の視点を意識するようになったのはこの経験がきっかけでした。
2社目は現場志向や顧客視点を身につける意味で学びはありましたが、勤務時間や手当の観点で働きづらさを感じたこともあり、働く環境の大切さを痛感しました。1年ほど勤務した後、これまでのスキルや経験を活かし伸ばしつつ、働く環境が整っている場所を求めて転職活動を行いました。
CSスキルとエンタープライズ対応の”いろは”を学んだ3社目
ーー杉本さんの3社目での業務内容をお伺いしたいです。
3社目は、AI技術を用いた画像解析などのソリューションを受託開発するベンチャー企業で、セールス兼ソリューションコンサルとして入社し、受注から納品までの業務を担っていました。分かりやすくザ・モデル型に例えると、担当顧客に対して、インサイドセールス・セールス・CSにあたるような業務を一気通貫で担当するイメージです。
1社目の経験を活かしてインサイドセールスの立ち上げに関わったり、セールス活動を行なったり、コードを書いたり…と今までの経験が発揮できたと感じます。扱うソリューションは顧客と共同で作り上げるものであるため、業界を問わず、課題に対し様々な提案ができることが非常に難しいからこそ、面白さとやりがいを感じました。
前職で地方のSMB企業を担当することが多かったのですが、3社目では扱ってるソリューションの特徴もあり、エンタープライズ企業がメインの顧客層でした。これまでの経験である程度通用すると思っていましたが、企業規模の違いによって求められるスキルも異なり、最初は適応するのが難しかったです。
いかにエンタープライズ企業の方と対等に話すかといったことや、AIのプロとしてどう提案するかなど、ディープテック企業におけるエンタープライズセールスの基本を学び、さらには、エンタープライズ企業の特徴やスキルセットを知れる良い経験だったなと思います。
ーーこの際にCSに近しい業務に従事されたのですね。ここまで多くのご経験を積まれていますが、杉本さんの「仕事選びの軸」はどういったものでしたか?
実は正直、これまであまり深く考えずキャリアを歩んできたと感じています。様々な選択肢を比較・検討し、その時その時でいろいろな人に相談しながら、最後は自分が面白いと思う道を勢いで決めていました。
ただ振り返ってみると、自己成長・会社の成長・市場の成長という3つの視点を意識していました。
また、ドローンのソリューションセールスとして働く中で、社会における未解決課題を最新のテクノロジーで解決すること、またそれにより与えられるインパクトの大きさにやり甲斐を感じたこともあり、その原体験が自分の転職軸に影響を与えていると思います。
CSとして顧客のサクセスにコミット、やりがいは「ありがとう」の言葉
ーー4社目になる、現職での業務内容を教えてください。
現在はAllganize Japanという、自然言語理解の領域においてAIソリューションを 開発販売するアメリカ発のスタートアップの日本法人で勤務しています。日本法人は10数名在籍しており、CSチームは2名体制です。
現在はCS業務とセールスのマネージャーを兼務していて、CSとしてはハイタッチ全域を担当しており、担当顧客のPjMとして問い合わせ対応やカスタマーセールス、またテクニカルな専門知識が求められる業務にも対応しています。
ーー入社当初からCSの立ち上げを任されたということですが、どのように進められたのでしょうか?
私はCSの1人目として入社したのですが、その頃は自分を含めて数名という会社規模で、CS組織すらない状況でした。当時は社長がセールスから受注後の対応まで全て1人で行なっていたので、まずは受注後のフォローアップを巻き取ることから始めました。またCSについても手探り状態だったので、本を読んだり、KOMMONSのコミュニティ勉強会に参加したり、MeetyでCSの方と話したり…といった知識のインプットも進めました。
インプットと並行しながら、ハイタッチの支援を中心に、少しずつフローを整えていきました。インプットしたことを積極的にアウトプットする感じですね。KOMMONSで教わったCSの業務マップを元に、自社のCS業務を整理し、それにどう対応していくか?などを考えました。やりたいことは多かったのですが、ハイタッチの支援に振り切っていたこと、さらにはエンジニアとの架け橋としての業務(ユーザーガイドの更新や機能テスト、仕様のすり合わせ等)も行っていたので、時間が全然足りなかったですね…(笑)
途中でCSがもう1名加わったことで、ようやくテックタッチ領域の施策も回すことができるようになりました。例えばオンボーディングの資料を作るなど、できることが増えてきたのは大きいです。ここ半年くらいで、ようやくAllganizeらしいCSの型が作れてきたと感じます。
(絶賛採用中なので、ご興味ございましたらこちらのMeetyにて話しましょう!)
ーー様々な業務を経験されてきた杉本さんにとって、CSの面白さや、やりがいとは何でしょうか?
やはり1番は、顧客の成功にコミットできることです。自社のサービスををいかに使ってもらえるかという観点もそうですし、負や課題を解決するために伴走できるのはやりがいもあるし面白さがありますね。
キャディの松木さんがあるインタビューで仰っていましたが、CSは総合格闘技だと思うんです。セールス・サポート・事業開発・開発・マーケの視点や役割が求められますよね。1つのことを突き詰めるのもいいと思いますが、何かに特化するより広範囲の業務領域を担いたい人には向いていると思います。
また、やりがいは、「ありがとう」の言葉をもらえることですかね。個人的には顧客からの感謝の言葉をどれだけ積めるかだと思っています。担当顧客から名指しで「杉本さんのサポート力や課題の深掘りを経ての提案が凄かった、ありがとう」と言われると思わずニヤニヤしてしまいます。(笑)
将来の展望はCOO、CS・セールスの枠を超えビジネスを動かしていく
ーーCSの立ち上げに携わり業務も型化できてきた…というところですが、現在、そしてこれから力を入れて取り組みたいことはありますか?
これまではマネージャーとしてCSの立ち上げに尽力してきましたが、今は新しく加わったメンバーへ引き継ぎ、私自身はCS業務を行いながらセールスマネージャーを兼務しています。
セールスは、ISが商談を獲得した後に打ち合わせにて接する重要な役割です。今はセールスとして、これまでCSとして顧客の課題や機能の仕様を理解してきたことが活きており、セールスとして解像度の高い説明ができますし、納得感を持って課題に対する提案ができています。
今後はCSとセールス両方の経験から得た視点を、チームに、そして会社全体に還元していきたいと考えています。
ーーコールセンター、セールス、CSの経験が全て凝縮され、現在に活かされているのが素晴らしいです。最後に、杉本さんが将来目指す姿について教えてください。
将来的には、COOになりたいと思っています。自分にとって何がモチベーションになっているかを考えたときに、「経営層のレイヤーにどれだけ近づいていけるか」という点だと気づいたんです。
一つの専門性を突き詰めるのも大切ですが、COOレベルを目指す上ではセールスやCSに絞らず、ビジネスサイド全体を見ていく必要があると思っています。
この目標もあり、2023年からMBAを取るため、大学院へ入学することにしました。基礎を体系的に学ぶことが大きな目的です。また、現在COOとして活躍される方の肩書きを見ると、MBAホルダーだったり、ベンチャーを上場させたりといった方が多いです。幅広いロールを担いながらIPOまでコミットさせた経験をお持ちだったりされる方が多く、その方々に追いつき、さらには追い越すためにもMBAを取得したいと考えています。また、MBAの取得を通じて、自分自身の武器を研ぎ澄ましたいという理由もあります。
また、CSコミュニティ「KOMMONS」に参加したことで新しい出会いや気づきを得られたので、今後も社内外のコミュニティへ積極的に顔を出してCS・セールスに関わらずいろいろな人と交流し、楽しく働いていきたいと思っています。
ーー計画性を持ちつつも楽しさを忘れず働く姿勢、とても大事ですね。杉本さんの新たなチャレンジを応援しています!今日はありがとうございました。
インタビュイープロフィール
杉本 直樹(すぎもと なおき)さん
Allganize Japan株式会社 Customer Success / Sales Team 所属
2015年に大阪大学大学院修士課程を中退後、営業代行会社に入社し、テレセールスに従事。その後、ドローンソリューション企業やAI企業にて一貫してセールスに従事。2021年1月より、Allganize Japanにカスタマーサクセスマネージャーとして参画し、部署の立ち上げを行う。エンタープライズ企業に対するハイタッチ支援を行うことはもちろん、PjMやセールスなど幅広い職務を兼務する。2022年10月より、セールスに異動し、部署の立ち上げに奮闘中。趣味は愛犬と遊ぶこと。
Twitterアカウント:@n__sugi
この記事を書いた人
奥村 葵
株式会社SmartHR のカスタマーサクセスマネージャー。自身もCSとして働く中で、様々なバックグラウンドを持つCS経験者のキャリアに興味を持ち、株式会社KOMMONSにてインタビュー記事の制作に携わる。