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2024.05.22

[イベントレポート] CS寺子屋Vol.15「客単価向上に貢献する、CSのエクスパンション設計」

アップセルやクロスセル、セールスへのトスアップなどのエクスパンション(顧客の利用拡大)は、CSが売上に寄与するために重要視されている企業も多いのではないでしょうか。

そこで寺子屋Vol.15では、「客単価向上に貢献する、CSのエクスパンション設計」と題して、株式会社ヤプリ カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス部 マネージャーの鏑木ひとみさんとUPWARD株式会社 カスタマーサクセス本部 ストラテジックマネジメント部 部長の三原真衣子さんにご登壇いただき、顧客の満足度を上げながら、収益を最大させるためにどんなことを実践していらっしゃるのかをお聞きします。

スピーカー紹介


株式会社ヤプリ
カスタマーサクセス部 マネージャー
鏑木ひとみ

新卒からアパレル業界でキャリアをスタートし、2015年にはファッションECモールを運営するマガシーク株式会社に入社。

MD職で企画立案やプライベートブランドの立ち上げに関わり、その後ECソリューション事業でPM職に従事。

2021年5月にヤプリにジョイン。現在はカスタマーサクセスを担当し、クライアントのアプリ活用支援やYappli CRMの普及、マネージャー業務を行っている。



UPWARD株式会社
ストラテジックマネジメント部 部長
三原 真衣子

新卒で医療系IT企業にて電子カルテ等の導入支援業務を経験した後、法人の渉外担当として大手調剤薬局チェーンの導入プロジェクト等を経験。 

不動産テックベンチャー企業にて新規事業立ち上げに従事。 

2019年12月よりUPWARDにジョイン 
AE -> CSM(Onb&ENT) -> CS MGR(ENT)

登壇1 株式会社ヤプリ 鏑木ひとみさん

今回は、「売上を追わないCS組織の客単価向上への貢献の仕方とは?」について説明します。

カスタマーサクセス組織のKGI/KPIとは

当社カスタマーサクセスのKGIは「解約率」であり、
2023年度末時点の実績は0.81%(※)で、ベンチマークしていた数値をを達成しています。
そして「解約率」を達成するために、下記指標をKPIとしています。
※四半期末時点の直近12ヶ月平均

<現状のKPI>
・活動記録数
・チャーンリスクの早期検知・回避活動
・アップセルリードのパス数
・更新案内
・ナレッジ登録

この中でエクスパンションに絡むのは「アップセルリードのパス数」と考えており、
私たちは「金額(売上)をKPIとして追わない」ので、リードのパス数しか追っていません。

なぜ金額を追わないのか?

「カスタマーサクセス」が会社のバリューとして組み込まれており「顧客の成功への価値提供にコミットする組織」として社内で合意が得られており、それがアドバンテージになっています。

私達なりに、金額を追った場合と追わない場合を言語化すると以下のようになります。

金額を追った場合、不要なものまで提案することで、未来のチャーンを創出してしまうことになってしまう。一方で、金額を追わない場合には「活用提案・促進に振り切った活動を行うことができ、事前にチャーンを抑止することができると考えています。
そのためにCSは「アップセルリードのパス数」だけを追う形にしています。

価値提供をコミットするには?

CSが売上にコミットしないため、フィールドセールス側が売上にコミットし、CSはトスアップの役割を担いますが、フィールドセールスは新規受注を重視し、CS組織は売上にコミットしていないために、既存顧客へのコミットに課題がありました。
その課題に対して私達は「既存顧客」へのコミットを専任としたグロースチームといった体制を構築しました。

グロースチーム/プロジェクトとは?

フィールドセールス本部に所属するチームであり、詳細は以下となります。

■発足: 
 2022年1月

■構成人数:
 FS:4名(部長1名 マネージャー1名 メンバー2名)
 CS:1名(メンバー1名 PJTとしての定例などに参加)

■業務内容:
 ・既存顧客へのアップセル・クロスセル提案
 ・カスタマーサクセスからのアップセルリードのクロージング
 ・他部署(開発、CSなど)と連携してのオプション化メニューの検討
 ・オプションメニューの販売促進キャンペーンの検討  など

グロースチームへのCSの関わり方

CSはグロースチームに一任せず、以下のようにグロースチームと関わります。

メンバーをアサインをして終わりではなく、商談の最後まで同席して関与します。

CSが費用提示の前まで担うことが多い理由は、要件定義時のオプション機能の質問が多岐にわたるために密接に関わる必要があります。

また、オプションニーズの声を拾うのはCS部門であり、キャンペーン後の数値の振り返り提案フォローも担っています。

クロスセル/オプションメニューについて

グロースチームとして強化しているクロスセル/オプションメニューは以下の資料にある3つです。

たとえば、飲食やアパレル業界向けのアプリをご利用の企業に従業員向けのアプリを提案しています。逆に従業員向けのアプリを先にリリースした企業にエンドユーザー向けのアプリを提案しています。

客単価向上に向けたアップセル

標準機能以外にも複数のオプション機能が存在します。それらのオプションの中から顧客ニーズに合わせた提案を行っており、客単価の向上に寄与していると考えています。

今回は複数のオプションの中から「Yappli CRM」と「App Growth」をご紹介します。

■Yappli CRM
アプリを通じて収集した情報を顧客情報としてCRMに取り込み、リアルタイムのコミュニケーションを実現する製品です。これにより、Yappliでは保持できなかった個人情報もYappli CRMに蓄積され、リアルタイムの施策に活用できます。

■App Growth
1つのアプリに対してCSが担当としてつきますが、さらにアプリの成功へのコミットを希望される場合、専任チームのメンバーも参加して、現状分析から成長支援までを行うサービスです。

「Yappli CRM」と「App Growth」はお客様の声を拾って生まれた製品/サービスです。

顧客に有用になりそうなサービス/機能を様々な声を拾いながら開発側にも意見を渡し、グロースチームと連携して、オプションを検討・作る動きを行っています。

まとめ

■エクスパンション設計
CS組織では売上を追わずに、お客様の課題解決・ニーズを満たすための設計。
顧客課題の理解をしていく中での、オプション化検討やグロースチームへのリードパス・連携をすることで、結果、客単価向上やお客様満足度に寄与している形です。

■エクスパンション体制
カスタマーサクセス部門とセールス部グロースチームでの協業

■最後に一言
ヤプリのカスタマーサクセスはお客様に 1番近い部門として、常にお客様側に立つ組織です。
その結果、満足していただき、継続していただく形で事業成長に貢献してます!

登壇2 UPWARD株式会社 三原 真衣子さん

今回は、「高い顧客解像度を活かしたエクスパンション設計とEnterprise領域における実践ポイント」について説明します。

CSのエクスパンション KPIと達成のための取り組み

当社では以下のようにCS組織に対して Vision/Mission を設けています。

■Vision
 日本のSaaS業界のベンチマークとなるCustomer Success組織

■Mission
 ・チャーンのコントロール ※チャーンにはGross、Netを含む
 ・チャーンのコントロールを継続的に実現できる再現性のある仕組みの構築
 ・顧客を最も知る部門として顧客フィードバックループの起点となる

CSの組織体制

KPIの話をするにあたり、まずはCS組織の構成をご説明します。
CS本部には3つの部門が存在しますが、私は「Strategic Management部」に在籍しており、各部門の役割は以下となります。

KPIは商談創出金額と受注金額

KPIは「商談創出金額」と「受注金額」の二本立てです。
メインは「商談創出金額」です。日々の顧客接点の中でエクスパンション機会を作り、AEに渡しています。
「受注金額」は、KPI達成のための形式的な商談創出がなされていないかをチェックする観点での副次的なKPIとしています。

目標値はリードソース別の目標受注金額のCSの目標金額を元に、各部毎の受注金額の目標を設定し、所属人数で按分し個人毎の目標金額を設定します。

KPI達成のための取り組み

私達はKPIを達成するために、以下のような取り組みを行っています。

①ポテンシャル情報の整理
・どの顧客に提案余地があるか調べ、各プロダクトごと(オプション含む)のポテンシャル情報をCRMに登録。

・具体的な提案タイミングを更新商談のMCP(Mutual Closing Plan)として管理。
 アクション漏れがないように、いつ顧客に提案するのか計画を立てることを重要視。

・商談創出金額目標に対してPipelineが足りない場合は、Pipeline Makeが急務となるため、
手元で調べられる情報をもとに仮説立てを行い、定期接点の中でのヒアリングを通じて、
ポテンシャルを徹底的に確認する。

②既存顧客向けマーケティング
・既存プロダクトの新機能や新しい製品の既存顧客向けのマーケティングはCSが主導。
 顧客解像度が高いCSならではの、具体的なユースケースを記載したメールの配信や
 確度の高そうな顧客をターゲットとしたキャンペーンなどを実施。

・新製品のリリース前には既存顧客向けのサーベイを実施してニーズを確認。
 類似サービスの利用有無や導入検討余地があるかを事前に把握して、リリース前から
 アプローチできるよう準備。

③PoCの実施
・新しいプロダクトや機能のリリース前に特定の顧客にてPoCを実施するケースがあり、
 この対象顧客の選定や推進はCSのミッションとする。

・CSが顧客選定をして、製品のフィードバックに関与することで早期に高付加価値な
 プロダクトの開発が行え、中長期的にはエクスパンションに繋げることができる。

・PoCの実施に関しては、特命的にミッションとして与え、評価に反映する仕組みと
 しています。なぜならPoCは難易度の高い取り組みであり、主要KPIに対しても
 寄与していないため、CSMが能動的にアクションを起こすのは難しいと考えているためです。

④顧客研究会の実施
・CSMの担当者が毎週持ち回りで担当顧客のユースケースを、「顧客分析フレームワーク」
 という雛形にあてはめて発表する勉強会を開催しています。

・発表を通じて、担当CSMが見えていなかった活用や提案のアイデアが出たり、
 成功事例が共有されたりして、エクスパンションの提案のきっかけを生み出す場と
 なっています。

・CSメンバーだけでなく社内の様々な部門が参加しており、全員で顧客解像度を高め、
 全社のValuesである「Commit to Customer Success」を体現するためのコンテンツ
 としても寄与しています。

エンタープライズ顧客のエクスパンション戦略

NRRの向上に大きく作用するのはEnterprise顧客です。
ユーザー(ID)単位での課金形態でサービス提供しているため、従業員規模が大きい
Enterprise顧客をターゲットすることにより、大型のエクスパンションが見込め、
NRRへ大きく作用させることが可能になります。

エンタープライズ顧客のエクスパンション戦略のポイント

私達はEnterprise顧客のエクスパンション戦略におけるポイントを以下のように考えています。

①確実なオンボーディングの成功
Enterpriseのオンボーディング時期は確実に定着化できるように活動を行っています。
当社の場合は、自社サービス以外のPlatform部分の要件定義にも必ず参加し、プロダクトが価値を発揮できるような構成を提案したり、重要拠点は現地でのハンズオンでの説明会を実施するなど超ハイタッチでの対応を実施しています。
さらに、このオンボーディングの段階から今後のステップとして別プロダクトの活用をロードマップに入れて提示して、エクスパンション提案のタネを蒔いておきます。

②最終意思決定者(=決裁者)への成果報告
Enterprise顧客においては、最終意思決定者とのコンタクトハードルが高くなる傾向にあります。
具体的なエクスパンション提案を行う前の段階から、最終意思決定者に対して、オンボーディングの成果であるライトサクセスと、他プロダクトの活用も含めた顧客の中長期戦略の実現であるディープサクセスに向けた提案を行うことが重要です。

③プロダクトチームとの協業
提案が具体化してくると、プロダクトに対するリクエストが発生する可能性が高いです。
そのため、受注した場合の当社への価値を社内に説明して、プロダクトチームと協業することが、エクスパンションを推進する上で重要です。
また、どのようにすれば会社全体として最適な効果を出せるかを考えてアクションすることも重要です。

④トライアルやPoCの実施
PoCの実施においては「目的と成功基準の明確化」と「実施対象の選定」の2点が重要です。
PoCは我々も顧客にもそれなりに負担のかかる取り組みであるため、「PoCを通じて何を解消するのか」、「本契約に向けてどういった点を検証するのか」というゴールや目的を明確にすることと、それを実現するのに最も適した体制を構築することがポイントとなります。

今後の取り組み

今後は開発体制の強化により、新プロダクトや新機能のリリース頻度が高まることが予想されているため、「新製品のPoC獲得件数」や「Pipegen件数」といったプロダクト成長に寄与できるKPIを設定することも検討しています。

CSの価値は顧客解像度が高い点だと考えていますので、顧客フィードバックループの起点として、PMFにコミットできるような設計にシフトしていけるよう取り組みを進めていきます。

(さいごに)エクスパンションの設計はCSだけでは実施できない

・CSがエクスパンションに貢献できる部分は、「高い顧客解像度」と
 「日々のCSに活動に基づく関係性」の2つ。これを活かしたKPIやオペレーション設計に
 することでCSMのスキルをエクスパンションに活用できる。

・エクスパンションには、大前提として既存プロダクトの活用、効果実感が必須。
 チャーンレートが高い場合や活用率が低い顧客はまずはそこの改善が先。

・エクスパンションに向けた提案は、導入時から始まっている。確実なオンボーディングと
 ロードマップの提示によりエクスパンションの成功率はぐっと高まる。

・エクスパンションの成功には、ClosingにおけるAEや、プロダクト開発・改善を行う
 TECHチームなど様々な部門との協業が必須。

・CSは顧客フィードバックループの起点として、エクスパンション活動を通じ、
 そのサイクルを高速化、品質を向上し、売上創出だけでなく、PMFに貢献していく。

カスタマーサクセスのライフサイクル設計に課題をお持ちならKOMMONS

株式会社KOMMONSでは「働くを、傍楽に」というVisionの元、事業を進めている会社です。国内最大級のカスタマーサクセスコミュニティを基盤に、カスタマーサクセス特化型のキャリア支援事業、カスタマーサクセス設計支援事業の2つを提供しています。

急速に拡大しつつあるカスタマーサクセス市場において、即戦力の人材を採用するのは非常に困難です。弊社では、オンラインコミュニティに登録する約700名のカスタマーサクセス人材の中で、経験者や潜在能力のある未経験者を紹介できます。

また、契約更新・アップセルを行う追加提案期の顧客体験設計計支援から提案可能です。人材を採用する前のプロセスから寄り添うことで、カスタマーサクセス組織の成長に伴走し、必要に応じて適切なスキルセットの人材を副業・業務委託・転職といったさまざまな形で紹介することができます。