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2023.04.13

[前編] 2023年、カスタマーサクセス市場はどうなる?Gainsight&JAFCOと語るCS未来予測 

2022年の振り返りと2023年のカスタマーサクセス市場動向をテーマに、Gainsight社代表取締役の絹村氏、JAFCO社の若林氏をゲストにお迎えし、KOMMONS白塚(スピーカー:大河内氏)とともにお話しいただきました。

※ イベント当日は白塚の声が不調だったため、大河内氏に白塚のパートをお話しいただきました。

カスタマーサクセスへの注目度が年々高まり、さまざまな企業で取り組みが進む一方で、業界トレンドは大きく変化しています。自社のカスタマーサクセスチームの成長を維持・加速していく為には、動きの速い業界の変化を正しく把握し、適応していくことが重要です。

各氏の経験を織り交ぜながら、カスタマーサクセスの現在地や今後期待される役割、キャリア形成などの最新情報を前編・後編の2記事に渡ってたっぷりお届けします。

※本記事は、2023年2月に開催したウェビナー内容を抜粋しています。

パネリスト紹介

Gainsight株式会社 代表取締役社長

絹村悠 氏

1978年生まれ。大阪市立大学卒業後、日本ヒューレット・パッカード(現日本HP)に入社。大手法人向け営業を経て、BtoB Eコマース事業の事業リードとして、デジタルマーケティングを中心としたリード獲得による顧客開拓から定着までのプロセスを実装。その後、2016年にTableau Japanに入社し、中堅中小領域における営業部門の立ち上げから拡大を通し、日本におけるデータ活用を中心に据えたデジタルトランスフォーメーションを推進。直近ではセールスフォース・ジャパンにて、執行役員 Tableau事業部 コーポレート営業本部 本部長を務めた後、2022年Gainsightに入社、代表取締役社長に就任。

ジャフコグループ株式会社 プロジェクト推進室部 プリンシパル

若林正晃 氏

東京大学大学院教育学研究科を卒業後、Boston Consulting Groupに入社。主に消費者向け商品・サービスの新規事業立案・実行を幅広く支援し、複数事業のローンチや、スタートアップ参画も経験。他に、中期経営計画の策定・デューデリジェンス・アジャイル経営の設計/浸透・サステナビリティ戦略策定等の各種戦略案件に従事。

2022年にジャフコグループに入社し、ジャフコグループの戦略検討/ サステナビリティ強化や、キャリアアカデミーの運営等を通じたスタートアップ市場の拡大・エコシステム構築に邁進中。

株式会社KOMMONS 代表取締役

白塚 湧士

総合商社のIT部門でカスタマーサクセス/サポート領域での新規事業立上げに従事。その後業界大手のコールセンター事業者に出向し、サポートチームのマネジメントを経験。退職後にスタートアップのカスタマーサクセスチーム立上げに携わった後、カスタマーサクセス領域に特化した人材マッチング・コンサル事業を行う株式会社KOMMONSを設立。

Chatworkストレージテクノロジーズ株式会社 パートナーセールス部

大河内 唱平

国産Saas企業3社で10年以上カスタマーサクセスに従事。営業部門のすべてを経験・組織構築・営業管理システム構築が得意。

モデレーター

ジャフコグループ株式会社 プロジェクト推進室長

キャリアアカデミー責任者

金澤慎太郎


2022年のカスタマーサクセス市場をどう振り返る?

オンボーディングの標準化など、基本的な取り組みは一周。日本全体のCSの成熟度が次の段階へ。 

ーGainsight 絹村氏

絹村氏:私自身、2022年8月の法人立ち上げからカスタマーサクセス業界に関わり始めました。それから数ヶ月さまざまなお客様と話す中で見えてきた、日本のカスタマーサクセスの現在地についてお話させてください。

まず率直に「日本のカスタマーサクセス市場はここまで成熟しているのか」と驚いたのが個人的な感想です。カスタマーサクセス従事者の間では、カスタマーサクセスの本質や提供価値について理解が進んでおり、またオンボーディングプロセスの構築と型化を通して成果を出している企業が多く見られ、基本的な取り組みという意味では一巡しているという印象を持っています。同時に、次のレベルに行くためにどうすれば良いかという議論が起き始めている部分もあるので、今日はその方向性をお話できればと思います。

ロータッチ・テックタッチで型化が進みつつもスタートアップでは難しさが露呈。ハイタッチの価値が再認識される結果に 

ーJAFCO 若林氏

若林氏:絹村さんと同じく、2022年はカスタマーサクセスが一巡した一方で、難しさも露呈した年だったと思います。投資先数社とやりとりする中で、ロータッチ・テックタッチの型化が進んだ中で(ハイタッチの)カスタマーサクセスをどう活用していくのか、またそれによって生まれる課題をどう事業に織り込んでいくか、という話を聞いています。一方でスタートアップはプロダクトが未成熟ということもあり、型化したカスタマーサクセスを作りづらいという話もあります。型化を経てロータッチ・テックタッチが一巡した一方、個々のお客さまにどう価値提供していくかという意味では、やはりハイタッチCSMが生きてくるという気づきがあった1年と言えそうです。

カスタマーサクセスの対象市場がSaaSから様々な業界への広がりを感じた1年。 

ーKOMMONS 白塚氏(スピーカー:大河内氏)

大河内氏:KOMMONSとしては、2021年の創業当初からカスタマーサクセス事業の支援をしています。1年目はSaaS企業からの相談が多かったですが、昨年はSaaS以外の企業からの問い合わせも増えてきたのが印象的でした。特にtoC向けにサブスクリプションサービスを提供する企業や電力企業、ハードウェア販売企業など、SaaSでなくても既存顧客の重要度が高い業界の企業からカスタマーサクセスに取り組み始めていると感じます。カスタマーサクセスの対象市場がSaaSからさまざまな業界へ広がっている、と実感した1年でした。

ーーなるほどですね。数年前と現在を比較したカスタマーサクセスのビフォーアフターについてもお伺いしたいです。

絹村氏:数年前はカスタマーサクセスの体系的な考え方がまだまだなく、各社個別で手探り状態だったと思います。その中で生まれてきたKOMMONSのようなコミュニティでナレッジ共有が進み、そこでオンボーディングプロセスをしっかり構築していくこと、オンボーディングを顧客の業務に組み込んでいくことで解約防止に繋がることが共通見解として認識され、取り組みが進んできたと思います。

ーー大河内さんからは、カスタマーサクセスがSaaS以外の業界に広がっているという話がありました。業界トレンドについてはどう考えられていますか?

大河内氏:さまざまなコミュニティが立ち上がっているのもありますが、よく聞くのは「カスタマーサクセスの立ち上げに関するnote記事を読んでやってみました」というのがあります。無料で情報を得られる機会や、赤本・青本(※)と呼ばれるような書籍も充実してきて、情報にアクセスしやすくなっていると感じます。カスタマーサクセスの印象が、難しいものから「やれそう」「真似してみよう」というものに変わってきているのではないでしょうか。真似してみてやっぱり苦労した、という企業がKOMMONSに相談いただくことも多いのかな、と感覚的に思います。

※カスタマーサクセスの基礎知識を身につけることができる2冊。

赤本:カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

青本:カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

ーー若林さんからは「一方で難しい部分も見えてきた」という話もありましたが、その中でも上手くやれているスタートアップの事例を教えていただきたいです。

若林氏:まず、1社に対してカスタマーサクセス担当1人を置くという通例の考え方ではなく、1社をさまざまな能力を持った複数人で担当することでより幅広い課題に対処することができ、結果的に上手くいっているという話を聞きます。またカスタマーサクセスの企画チームを設け、ハイタッチ対応を通して得た各企業の情報を型化に活かしていく、というケースも見られます。

2023年、カスタマーサクセスが成果を生み出す為のポイントは?

NRRをミッションとするCSが主流に(マネタイズも有)成否の鍵は、

①顧客理解に基づくビジネス成果

②デジタル活用での効率化とスケーラブルな仕組み 

ーGainsight 絹村氏

絹村氏:私からはアメリカのカスタマーサクセス市場で何が起こっているのか、という視点でお話させてください。前提として、2022年から2023年にかけてSaaS市場ではパラダイムシフトが起こっており、より効率的で収支を意識した経営が投資家から求められています。その中でカスタマーサクセスは、事業への貢献を分かりやすく出していくこと、また生産性の向上が必要とされている背景があります。

その現状を受けた今のトレンドとして、NRR (※) などを用いて収益性を意識する企業が増えています。今後は、カスタマーサクセスのサポートを有償化してマネタイズしていく、コンサルテーションを通してより業務に深く入っていく、という変化が見られると考えています。ここにおける成果のカギは、特にハイタッチ領域における顧客理解となります。日本のSaaS企業の経営者と話していると共通して出てくるのが「顧客解像度を高めたい」という点ですが、その先端をカスタマーサクセスがリードすることで付加価値を高められると思います。

生産性の向上という話では、現状カスタマーサクセスの型を労働集約型で回しているケースが非常に多いと思いますが、デジタルで効率化して大きくスケールさせていく流れも同時に進んでいくと感じます。

※ NRR (Net Retention Rate or Net Revenue Retention) :既存顧客からの「売上維持率」を計る指標

ーー今のお話はアメリカのトレンドだと思いますが、日本が影響を受けるまでには一定のタイムラグがある印象です。実際、いつ頃日本に影響してくると思われますか?

絹村氏:昨年弊社CEOのニック・メータが来日してさまざまな顧客と話す機会がありましたが、彼は「アメリカと日本のトレンドにそこまでライムラグを感じない」と言っていました。おそらくカスタマーサクセスに関しては、1〜2年遅れで日本にも同じ潮流が来るのでは、と考えています。

そのため、先ほど述べたような「顧客理解によるビジネス成果」「デジタル活用による効率化」の2点に今から対応していけるような企業は、今後突き抜けてくるのではないかと思いますね。

不況により、CSがコストとしてより厳しく見られる。立上げ期から将来のROIを見据えた仕組み化と組織づくりを進めるべき。 

ーKOMMONS 白塚氏(スピーカー:大河内氏)

大河内氏:やはりカスタマーサクセスはコストとして見られることが多いと感じますが、立ち上げ期から、将来を見据えて指標やROIを意識した仕組み化を進めていくべきだと感じます。そういった流れでCS Ops (Customer Success Operation※) 組織を立ち上げる企業も増えています。一方で、各社、今後どの領域でカスタマーサクセスの価値を高めていくのか悩まれている印象はありますね。カスタマーサクセスはプロダクト改善や受注率アップなど色々な関わり方があるため、プロダクトとの相性も踏まえて何が最適かを模索しているフェーズだと感じます。

※ CS Ops (Customer Success Operation) :カスタマーサクセス活動最適化のために関連システム・インフラの管理・運用・改善を担うポジション・組織を指す

ーーここでいう仕組みや組織づくりとは具体的にどんなものでしょうか?

大河内氏:先ほど話題にも出た労働集約型がネックになっているようで、今人力で行なっている業務をメールやシステム、コミュニティなど別の方法で対応していく動きがあります。代替方法を手探りする中では色々な視点が必要となるため、ハイタッチ以外のスキルセットも求められてきます。例えば、カスタマーサクセス未経験でもマーケティングスキルがある方を採用し、コミュニティ経験を活かし組織づくりに関わっているケースもあります。

ーーこういった仕組み組織の観点から、カスタマーサクセスがプロダクトデザインの改善にも関わっていくことはあり得るんでしょうか?

大河内氏:そうですね。今までは営業が開発に対してフィードバックする企業が多かった印象ですが、特にそのベンチャー企業に置いてはカスタマーサクセスがフィードバックしていく企業も増えてきている点については、今が転換点になっているのかな、と思いますね。

ーーすごく面白いですね。ベンチャー企業というキーワードが出たので、若林さんにも話をお伺いしたいのですが、記載いただいたポイントを補足いただけますか?

①事業戦略・プロダクトの強みにCSをどこまで紐づけて考えているか?

②ハイタッチが重要な中、IT/人/コミュニティ をどのように棲み分けるか? 

ーJAFCO 若林氏

若林氏:先ほど大河内さんが触れられた、カスタマーサクセスがプロダクト開発の起点になるというお話が、まさに投資先からも上がってきています。

これまで営業側で把握できていなかった課題、そもそも顕在化してこなかった課題をカスタマーサクセスが吸い上げ、開発サイクルを回していくことを考えてられている印象です。投資先のスタートアップ企業は、このサイクルを通してプロダクトが進化している感覚を得られているようですね。

そういった意味では、まさに日本でもカスタマーサクセスがプロダクト開発に関わっていく流れが起きている、ということを感じている次第です。

カスタマーサクセスの役割期待とは?

ーー今の話を紐解いていくと、カスタマーサクセスに期待される役割に繋がってくると感じます。この点について、大河内さんから補足いただけますか?

大河内氏:本来カスタマーサクセスの立ち上げ期は、上の図でいう真ん中の部分、つまり継続率を高めていくことがメインミッションになります。一方で、その他の部分で何を尖らせるかは、各社によって異なってくるかと思います。

やはりベンチャー企業であれば売り上げを取っていきたいので、新規リード獲得に繋げたいこともあるだろうし、もっと目先でいくと、既存のアップセル/クロスセルで売り上げに直結させようということもあります。そこまでやり切ると、次は初回営業の受注率アップや、PLG (Product Led Growth※) の一貫として開発フィードバックや技術サポートの部分を強化していくケースも見られます。

例えば、企業フェーズが市場を取りにいく段階で新規リード獲得を考えている場合、カスタマーサクセスとしてはリード獲得に繋がるような事例を作り出すという役割が期待されます。その事例を活用したマーケティングを行うことによってリード獲得に貢献できると、新規獲得のためにもカスタマーサクセスの知識・経験が必要だよね、という話に繋がってきます。

ただ、こういった戦略については各社かなり悩みながらチャレンジしているようですね。企業によってはカスタマーサクセスチームでも継続率を全く見ずに、独自の戦略に紐づいた指標をチームの目標にしているケースも聞きます。これまでの価値観が大きく変わってきたなというのを実感しますね。

※ PLG (Product Led Growth): マーケティングや営業の活動をプロダクト内に取り込むことで事業を拡大させる事業モデル

ーーなるほどです。期待する役割が増える中で、役割を全方位へ広げていくのか、それとも特定部分を尖らせていくのかでいうと、絹村さんはどちらが良いとお考えですか?

絹村氏:事業や製品の成熟度、フェーズによって異なると思いますが、カスタマーサクセスが企業におけるハブの役割を果たす方向に向かっているのであれば、全方位的に広げていくべきだと思います。先ほど開発フィードバックの話が出ましたが、これと同時にセールスプロセス全体へのフィードバックもあると思います。本当にサクセスできる顧客のターゲティングやそこに対するメッセージングを伝えつつ、同様のフィードバックをプロダクト側にも反映していくことができます。社内でのフィードバックループを回していくイメージですね。その上でカスタマーサクセス組織が中心になっていくこと、また組織をスケールさせていくことを考えると、全方位的に広げていくのは重要な考え方だと思います。

ーースタートアップの視点としてはいかがでしょうか?

若林氏:特にシード・アーリーフェーズであればプロダクトが未成熟なため、カスタマーサクセスによる開発フィードバックはもちろん、機能不足な部分を技術的にサポートとするといったことが重要になってきます。

プロダクトやサービスが一定まで立ち上がってくると、既存顧客に対していかにアップセル・クロスセルを行っていくかというところがポイントだと思います。

このようにフェーズに応じて企業戦略をピボットする中で、その「戦略のど真ん中」にカスタマーサクセスを位置づけている企業はやはりグロースが早いのかな、ということを思ってます。

「カスタマーサクセスキャリアは今後どうなる?」(後編はこちら

※「カスタマーサクセスキャリアは今後どうなる?」というトピックについて、アメリカのマーケット状況や副業への機運、必要とされるスキルなど幅広く議論しています。


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